アメリカが核の傘で日本を守れない本当の理由 日米関係者はことを荒立てないため黙認している
東洋経済オンライン / 2024年10月22日 15時0分
2024年10月、石破茂政権が誕生した。石破首相は、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想など、安全保障について意欲的な発言をしている。日本を含む東アジアは、ロシア・中国・北朝鮮などの権威主義国家に囲まれている。北朝鮮はミサイルを撃ち続けている。日本の平和を維持するために、いま本当に必要なこととは——。橋爪大三郎氏の最新刊『火を吹く朝鮮半島』より解説する。
日本が核攻撃を受けてもアメリカは反撃しない
東アジアには、NATOの集団安全保障にあたる仕組みがない。アメリカをハブに、日米、米韓、米台、……といった二国間同盟の束でしかない。アメリカがぐらついた場合、全体がばらけてしまう。また、アメリカ以外の国は核保有国ではない。アメリカ一国のやる気に依存しているのが、この同盟関係の弱点である。
ではアメリカは、どんな場合もこれら同盟国を守るだろうか。アメリカの核の傘は、日本や韓国や台湾や……に対して万全な楯として機能するだろうか。相手は北朝鮮、中国。いずれも権威主義的な独裁の、核保有国である。
まず日本の安全保障について考えてみる。北朝鮮の核に対して、日米安保は万全か。
結論から言おう。アメリカは日本を核の傘で守ることができない(核の傘で守ることをしない)。日米同盟のもとでも、日本がアメリカの核によって守られるとは言えない。
(a) 北朝鮮が日本に通常弾頭ミサイルを撃ち込む
⇓
(b) 日本が北朝鮮に通常弾頭ミサイルを撃ち込む
⇓
(c) 北朝鮮が日本に戦術核弾頭ミサイルを撃ち込む
となった場合に、アメリカがそれに反撃(d)すれば、
(d) アメリカが北朝鮮に戦術核弾頭ミサイルを撃ち込む
⇓
(e) 北朝鮮がアメリカに戦略核弾頭ミサイルを撃ち込む(!)
⇓
(f) アメリカが北朝鮮に戦略核弾頭ミサイルを撃ち込む
このようになって、アメリカはひどいこと(e)になる。アメリカ大統領なら、アメリカの国民をこんな目に遭わせるわけにはいかない。これを避けるには、北朝鮮が日本に核兵器を使用した(c)としても、それに反撃(d)しない、以外にない。
つまり、アメリカは、日本が核攻撃を受けても、あえてそれに反撃しないのだ。これが、日米安保の「核の傘の破れ」でなくて、なんであろうか。
念のために言っておけば、北朝鮮も、北朝鮮が核攻撃によってひどいことになる(f)のはいやだろう。けれども北朝鮮は、国民の権利と安全に責任をもつ民主主義の政権ではさらさらなく、国民のことなど実はどうでもよいと思っている権威主義的な独裁政権である。
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