あえての「棄権」や「白票」は不本意な政治家の黙認 「投票したい人がいない」とお嘆きのあなたへ
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 9時0分
抗議の意思を示しているのだからよいのではないのか? 己の信念に依拠した天晴れな行動だと、評価したくなる気もします。あえて棄権し、意思をもって白票を投じたのですねと。それなりのお考えがあってのことなのですねと。
しかし政治という人間の営みにおいては、思い詰めた気持ちや感情とは裏腹に、冷徹かつ当たり前の帰結が待っているのです。それは政治的意思の中に含まれる重要な要素である「決める、選択する」というものが、ゲームのルールの中でどう判断されるのかということです。
政治の位相空間では、「それはいかがなものでしょう?」と明確にノーと示さなければ、すべて自動的に「私は今のままの世界でよいです」という意思なのだとしてカウントされてしまいます。 つまり「沈黙・棄権・白票」=「現状に不満なし」です。なんと無慈悲な力学でしょう。
日本の政治家選びの大半は「黙認」
己の気持ちと裏腹に、そうなってしまう理由は、政治における大原則、すなわち「世界を1ミリでも変えたいなら声帯を振動させねばならない」がどっしりと存在しているからです。棄権や白票投票に内心どのような気持ちを込めようと、ここは実に冷徹で解釈は一択です。
選ばれる側は実に慇懃無礼であって「異論があるならと機会を用意しておきましたが、ないようなので、我々政権担当者を是認してくださったとします」という台詞を脳内に残しつつ、「有権者の皆様の賢明なご判断をいただきました」などとうそぶきます。
日本の政治家選びはこのように大半は「黙認」によってなされていることになります。
メディアも評論家も言論人も、「日本の有権者は政治への関心が低い」とか、「かように悪政が続いているのに有権者は寛容を通り越して市民の義務を放棄する無責任な人々である」と非難し、時には世界で一番人の心を閉ざさせる「劣化した日本の有権者は民度が低い」などの軽蔑の言葉すら投げかけます。
支持政党なしと答える人が増える理由
とりわけ自称リベラルの、本当は不寛容な政治関心の高い層の人々は、「なおも与党に投票する人々がいるとは、もう救いようがない」などと嘆息をついて、それでいて正論めいたことだけを言って、「このままでよいとは思えないけど」と心がザワザワしている人たちに疎まれて、民主政治の仲間をつくることに失敗し続けています(拙著『なぜリベラルは敗け続けるののか』集英社インターナショナル、2019年)。
政権党への文句は百万も口にしますが、やることは悪口や批判をすることばかりで、苦しい中で自ら汗をかいて野党を育てる努力と工夫をしている人たちは、本当に一部しかいません。正しかろうことは口にしますが、「そんなやり方で人の心が開くはずがない」みたいな選挙応援をし続けているのです。
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