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あえての「棄権」や「白票」は不本意な政治家の黙認 「投票したい人がいない」とお嘆きのあなたへ

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 9時0分

雨が降ろうと槍が降ろうと、在野勢力に投票するという「固定客」の方には、適宜お声がけだけしていれば大丈夫です。いつもの定番の与党批判と少数派の擁護と平和への想いを語れば、安心してくれるからです。

しかし、それでは投票に行かない人たちを仲間にすることはできません。与党の支持率がどれだけ下がろうと、彼らを脅かす野党の支持率は上がりません。支持政党なしと答える人が増えるだけです。

こうして政権党の政治家たちは助けられています。無党派や、投票されない、カウントされない声はそのまま、今の世界を黙認しているものとして扱えるありがたい信任投票になるからです。

かつて支持率が消費税率と見間違うほど低くなった不人気総理大臣は、選挙中の会見で愚痴をこぼし「(選挙に関心のない無党派層は)寝てしまってくれればいい」と実に正直なことを漏らしてしまいました。でも、これは現在政治権力を運用している人たちの本音です。

現行の選挙の不思議なルール

元総理大臣はいい人だから本当のことを言ってしまったのです。政治における意思表明は、常に相対的比率として数値化されてしまいます。議会の議席を6割近くも取っている政党が、実は20%程度の人たちの支持でも政権党になりうるというのが、現行の選挙の不思議なルールです。

そこでは、あくまでも「声を上げた人たち」(投票者)のパーセントで勝負を決めますから、「黙っていた人」抜きでのゲームとなります。100人中99人が棄権すれば、たった1票のイエスだけで多数決は可能になります。非情なる鉄則はこのように巧妙な形で、真面目でピュアな怒りでゲームを抜けた人々を利用しているのです。

それでも自分の選挙区には投票したい人が1人もいないと困っている方もいるでしょう。

その気持ちもよくわかります(今の私がそうですから)。だから「心の底から政治を託したいと思っている人じゃないのに投票なんてするのは不誠実じゃないですか?」なんて私に文句を言う人もいます。

でもそのピュアな気持ちにしたがって、迂闊な純粋精神を発揮してしまうと、もともと一番あり得ない投票先の政治家を自動的に応援してしまうという、最も不純なる行動(非行動)をしたことになります。

私たちは普段は日常生活の中で、適当に汚れちまった大人として、心に嘘をついて、偽りの言葉と態度で日々をやり過ごしています。責められる筋合いはありません。生き延びなければならないからです。だから、「最良の人を信念に基づいて応援し投票する」ということが成立しない条件にあったからって、突然ピュアなことをやらなくてもいいのです。

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