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大阪王将が川崎でひっそり始めた「新型店」の実態 ハーフサイズが充実、「少量多種」で時代にマッチ

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 8時30分

そこで、ひと手間かけて盛り分けをしたり、量は少なくても小皿で多種類が楽しめたりすることは、原価をかけずに付加価値をアップできる手法ということで注目され、取り入れる店が増えている。

「ハイカロリーこそ正義」は時代遅れ?

大阪王将が言う「おなかいっぱい」の定義が変わったというのは、近年筆者も強く感じていることだ。

ひと昔は、量は多ければ多いほどよい、カロリーも高いほどよい、食べ応えのあるガッツリしたものが至高であり、ヘルシーなものは味気ない、満足できない、という風潮があった。それこそもともと大阪王将が提供していたような、茶色いガッツリな町中華的料理がフィットしていた。

しかし現在はニーズも多様化。健康や体型、栄養面を気にする人が増えた。美味しいことは前提として、食事の際に「身体にいいか」という観点が発生し、むしろカロリーが低いことが歓迎される場面も多くなった。

必ずしも満腹になる必要がないと考えられるようになり、もし満腹になるにせよ、ガッツリとした肉や揚げ物、炭水化物で腹を満たすのではなく、野菜やたんぱく質を多く含む食品で満たしたいという人も増えたのではないだろうか。

そのニーズに対し、大阪王将は今回ガッツリの中にも野菜を取り入れたメニューも意識したという。今回筆者が注文した酢豚などがそのようで、色鮮やかなピーマンやパプリカ、レンコンがゴロゴロ入っていた。

また居酒屋の事例を持ち出すと、最近の居酒屋では「野菜料理」に注目がにわかに集まっている。

例えば、旬の野菜を使ったおばんざい盛り合わせはかなりいろんな店で見る。野菜ならお腹にたまらないので、他にもたくさんの種類のおつまみが楽しめることがポイントだ。野菜を多用してるので見た目も色とりどりで美しく仕上がり、「ヘルシーなので罪悪感がない」とも好評を得ている。

これはお客の飲食店に行く目的がますます「腹を満たすこと」ではなくなっていることを示している。お客は「外食でしかできない体験」を求めて居酒屋に来ており、腹を満たすことは二の次三の次。

「大阪王将」はもともと食事業態の色が強いので居酒屋ほどではないにしろ、それでも時代の変化とともに「外食ならではの体験」を求められるようになっているのではないだろうか。単に満腹になりたいだけなら内食や中食の方がよほど安上がりなのだから。

たくさんの種類を少しずつ楽しめる食事を家庭で用意しようとすると、かなりの手間がかかる。外食には家庭では味わえない体験が求められているからこそ、この「少量多種」が体験としてウケている。

そして、ガッツリハイカロリーなもので腹を満たすのではなく、野菜を取り入れた健康的な料理でお腹いっぱいになりたいというニーズが強まっている。こうしたライフスタイルや趣味嗜好の変化によって生まれた大阪王将の新モデル店。大手チェーンのこの挑戦が受け入れられるのか、気になるところだ。

そこまで割高でないのもポイントだ

大関 まなみ:フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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