北朝鮮軍のロシアへの派兵は確実に始まっている 派兵実現を急いだロシア・北朝鮮の本気度
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 8時0分
筆者が得た情報では、ロシア極東の軍訓練施設で1万1000人規模の北朝鮮軍部隊がすでに訓練を行っていることは確かだ。この部隊に関する詳細な情報をキーウ側は把握ずみだ。
2024年6月に合意した派兵を、その年の秋に開始する――。ロシアは何故、北朝鮮からの派兵をこんなにも急いだのか。狙いははっきりしている。異常に多い戦傷者を出してもお構いなしに、人海突撃戦術を続けるロシア軍としては、先細る一方の兵力補給の緊急対策として、北朝鮮軍兵士で穴埋めすることを目指しているのだ。
現在、ロシア軍は小規模都市を制圧するなどウクライナ東部ドネツク州での攻防で主導権を握っている。しかし一方で、戦傷者の数が記録的水準に達しているのに、モスクワからの補充は逆に次第に少なくなっているのが実情だ。
ウクライナ軍関係者によると、ロシア国防省は最近まで毎月3万~3万5000人の契約兵を補充として全戦線に送ってきた。しかし、2024年10月の前半にドネツクで補充兵としてモスクワから補充として送られてきたのは、わずか1600人余りだったという。だから北朝鮮軍の参戦を喉から手が出るほど望んでいるのだ。
ロシアが北朝鮮側に対し、派兵を要請したのには、直接の契機があった。2024年8月6日のウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃だ。不意を突かれたロシア軍は対応に手間取り、空挺部隊などの主力を投入できたのは約1カ月後だった。
こうした苦しい事情を受け、プーチン政権は北朝鮮に派兵を緊急要請したのだ。北朝鮮部隊はわずか約1カ月後に派兵してきた。いかに両国軍部の間で準備ができていたかを示すスピードだ。本稿執筆時点で、クルスク州の占領はすでに3カ月が過ぎ、ロシア軍は奪還のメドが立っていないのが実情だ。
クルスクでの任務
このため当面、派兵部隊はクルスクで任務に当たるとみられる。その限りにおいては、派兵部隊は形のうえではロシア領防衛に当たる形になる。プーチン氏は、2024年10月半ば、上記の首脳会談で金総書記と署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准手続きのため下院に提出した。この条約は、秘密規定も含め、有事の際の軍事相互支援を規定している。
つまり、批准さえ済めば、今後ウクライナ侵攻で派兵部隊がクルスク州でロシア軍と合同作戦を展開しても、これは同条約に沿った領土防衛行動で、違法ではないと主張する構えなのだろう。
同時に、ロシア軍は極東の軍訓練施設で北朝鮮部隊に対し、ロシアのパスポートを配った。これは参戦した北朝鮮軍兵士が今後ウクライナ領内で死亡した場合、ロシア軍兵士であると偽りの主張をし、ウクライナへの侵攻でロシアと北朝鮮軍がともに戦っているとの国際的批判をかわす思惑とみられる。
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