「島耕作」辺野古抗議活動をめぐる表現で"炎上" 岩国という「基地の街」に育った弘兼憲史がなぜ
東洋経済オンライン / 2024年10月24日 12時0分
10月17日発売の「モーニング」(講談社)46号掲載の人気マンガ『社外取締役 島耕作』の一場面が物議をかもした。沖縄の海が見えるゴルフ場のクラブハウスで昼食を取る島耕作に、一緒にプレーしていた現地の女性が辺野古の埋め立て工事について説明するシーンで、こんなセリフが飛び出したのだ。
【画像】物議をかもした10月17日発売の「モーニング」『社外取締役 島耕作』のシーン
「抗議する側もアルバイトでやっている人がたくさんいますよ 私も一日いくらの日当で雇われたことがありました」
この女性のセリフについてX(旧ツイッター)で批判の声が噴出した。「抗議活動に日当が出ているというのは使い古されたデマである」「フィクションとはいえ辺野古という地名を特定してデマを事実であるかのように語らせるのは抗議活動をしている人たちへの侮辱である」「根拠があって描いたのか」というのが主な批判内容だ。
お詫びが編集部と作者の連名で掲載された
10月20日には「琉球新報」がこの問題を取り上げ、講談社に対して見解を求めた。同紙の取材に対し作者の弘兼憲史氏は「(沖縄在住の)知り合いから聞いたので書いた」と語ったとのこと。21日には「モーニング」公式サイトに「フィクション作品とはいえ軽率な判断だった」とのお詫びが編集部と作者の連名で掲載され、単行本収録時に修正するということで一応の決着を見た。が、表紙にデカデカと「弘兼憲史 画業50周年!」と銘打った号で、こんな騒動を招いてしまったのは痛恨の極みだろう。
島耕作シリーズは1983年のスタート。課長昇進を目前に控えた係長として初登場した島耕作は、保身に汲々とする小心者で、妻子と住宅ローンを抱えて小遣いも少なく、浮気相手の女子社員にホテル代を出させるような男だった。その姿は、どこにでもいる等身大の会社員であり、だからこそ読者の共感を得たのである。
ところが、島耕作はバブル経済の拡大と歩調を合わせるかのように、ビッグな男になっていった。たまたま関係を持った女性がすごい情報網や大物へのコネを持っていたりする彼の強運ぶりはどんどんエスカレート。バブル崩壊後の1992年に課長編が終了してから部長編が本格的に連載開始されるまで7年の時が流れ、世間は大不況に陥っていたが、島耕作は“一人バブル”を続けていた。
弘兼氏のステップアップにも重なる
その後もさらに取締役、常務、専務、社長、会長、相談役と出世の階段を上り詰め、現在の社外取締役に至っては、まるで水戸のご老公のよう。その出世街道は、漫画家としての弘兼氏のステップアップにも重なるわけで、今や政財界とのパイプも太い。以前から原発PRのウェブマンガ『東田研に聞け』のキャラクターデザインや日本維新の会PRマンガ『ふたりの維新志士』の監修なども務めており、政権寄りの立場であることは明らか。経営者側になってからの島耕作の言動にも、その傾向は表れている。それゆえ、辺野古問題について前述のようなセリフが出るのも不思議はない。
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