石破首相「夫婦別姓」翻意で高まる自民党への圧力 自民過半数割れなら、党内議論を待たず実現も
東洋経済オンライン / 2024年10月24日 7時40分
「選択的ということなんだから、それを否定する理由はない」「(議論の)期限は切ってもいい」
【写真】9月の総裁選で高市早苗氏は、選択的夫婦別姓制度に否定的な姿勢だった
石破茂首相は9月の自民党総裁選期間中、出演したテレビ番組で選択的夫婦別姓について、こうコメントしていた。
しかし10月7日の衆院本会議の代表質問では、意見を一転させた。「国民の間にさまざまな意見があり、政府としては国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と、これまでの政府が繰り返してきた、従来の見解を述べるにとどまった。
経団連と国連が“苦言”
「正直、残念だ」と漏らすのは、「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の共同事務局長を務める三宅伸吾議員。同議連には、石破首相も名を連ねている。総裁選の決選投票では、制度導入に反対の高市早苗氏と石破氏が争った。「(石破氏が)選択的夫婦別姓の導入に賛成であることが投票の理由の一つだった議員もいたはず」と三宅氏は指摘する。
石破首相の慎重姿勢を、苦戦が予想される衆院選前に保守層を意識した安全運転と見ることはできる。ただ選択的夫婦別姓に反対する自民党への圧力は、確実に高まっている。
6月には、自民党に強い影響力を及ぼしてきた経団連が選択的夫婦別姓の早期実現を求める提言を発表した。政府が推進してきた旧姓の通称使用について、「女性活躍が進むほど通称使用による限界が顕在化するようになった」と明示した。
経団連ソーシャル・コミュニケーション本部統括主幹・大山みこ氏は「女性経営者だけでなく、男性を含む幅広い層から『よくぞ言ってくれた』という反響が多く届いた」と話す。
自民党支持層の6割超が、選択的夫婦別姓の導入に賛成とした世論調査もある。
地方議会では、選択的夫婦別姓の議論や実現を国会に求める意見書が続々と可決されている。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションによると、2015年に最高裁で夫婦同氏規定は合憲だとする判決が下される前に可決された意見書は50件だったが、2024年10月時点で426件以上になった。
もはや国内にとどまらず、国際社会からも答えを求められている。
10月17日に国連女性差別撤廃委員会は、日本に対する対面審査を8年ぶりに実施。夫婦同氏を法律で義務づけている国は日本だけであり、委員会は民法の同規定を「差別的な規定」として、2003年、2009年、2016年と3回にわたり民法を改正するよう改善勧告を出した。が、これまで政府は対応を取ってこなかった。
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