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石破首相「夫婦別姓」翻意で高まる自民党への圧力 自民過半数割れなら、党内議論を待たず実現も

東洋経済オンライン / 2024年10月24日 7時40分

今回の審査でも国連の委員は「(夫婦同氏制度に関して)女性の生活に悪影響を及ぼしている」など厳しく指摘。これに対して日本政府の代表団は「家族のあり方に関わることから、より幅広く理解を得る必要がある」「旧姓使用の拡大に努めてきた」などこれまでと同様の回答を繰り返すのみだった。

国連は勧告を盛り込んだ最終見解を、10月中にも発表する見通しとされる。

「党議拘束」外すよう求める声も

こうした動きを受け、自民党も重い腰をあげて動き始めている。7月には党内の氏制度のあり方に関する検討ワーキングチームが3年ぶりに会合を開いた。

「まずは議論の座敷がなければ始まらないので、(ワーキングチームの再開は)良い動きだ」(三宅議員)。強硬な反対派議員は少数とされるが、ほぼ賛成しながらも新制度で子供の姓がどう扱われるのかを見極めたい議員もいるという。

三宅議員は「議論を尽くして自民党内で満場一致とするのが望ましい。ただ、議連を立ち上げて3年が経っており、法案採決の際に(政党の決議に従って投票するように所属議員に義務付ける)党議拘束を外すことに関してもそろそろ議論をすべきだ」と話す。公明党とほとんどの野党が制度の導入に賛成しており、自民党が党議拘束を外せば法改正が実現する公算だ。

今回の衆議院選挙の結果自体が、夫婦別姓制度の導入時期に大きな影響を与える可能性もある。

各情勢調査によると、自民党は議席数を減らし単独過半数の維持は微妙と見られている。自民党・公明党の与党で過半数を確保できるかが攻防ラインとなっている。

9月30日に自民党と公明党によって交わされた連立政権合意書では「選択的夫婦別姓」に関して明記されず、公明党は制度の導入推進を衆院選の選挙公約に掲げている。もし自民党が単独過半数を割った場合、公明党や野党が法案で一致すれば、自民党内の議論を待たずに選択的夫婦別姓の導入が実現する可能性がある。

どう家族の関係は変わるのか

法改正に向けた環境が整いつつある中、家族のあり方と氏の関係をどう整理すべきか。

社会学者で文教大学専任講師の中井治郎氏は、「戸籍制度はイエ制度の下で出来たが、(氏の問題は)今やイエ制度ではなくジェンダーの問題となっている」と分析する。従来は家名の存続が一番の目的で、長男以外の男性は養子に出されるなどして姓を変えることも珍しくなかった。「今は『男の姓を残す』という価値観にスイッチしている」(中井氏)。

さらに「学校や会社の人間関係が流動的になる中で、安定してみえるものが家族であり、姓が情緒的な結びつきのシンボルになっている。選択的夫婦別姓の実現は不可避だが、社会として夫婦別姓の選択肢を迎える準備が必要だ」と指摘する。

結婚に際し95%もの女性が改姓しており、アイデンティティの喪失感や日常生活におけるさまざまなトラブルといった不利益が女性に偏っている。長年放置されてきたこの現状を変えることが、固定的な性別役割分担意識からの解放や、家族のあり方や生き方を自ら選択できる社会の実現につながる。

今年3月に始まった第3次夫婦別姓訴訟は、最高裁での判決が出るまでに3~5年かかるとされている。立法府である国会が本来の責任を果たせるか。「いつまでも引き延ばすことはしない」と明言した石破首相には、強いリーダーシップが求められている。

田中 理瑛:東洋経済 記者

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