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「心を読む能力」が人により異なるという衝撃事実 リーダーに不可欠なメンタライジング能力とは

東洋経済オンライン / 2024年10月25日 12時30分

コブによれば、仮想現実(VR)を使用すれば、医師と手術室看護師は学習を速められるという。VRを使った訓練を合同で4セッション行えば、別々に訓練した場合より間違いが減って学習速度が上昇するのだ。

もちろん、ここで示したのは、高度な訓練を積んだ専門職の例ではあるが、私たちはこうした事例にならった訓練によって、驚くほど良好な結果を出すことができる。

人数が増えるとメンタライジングが困難になる

ただしその場合にも、関係する人数を絞ることが前提になる。人数が増えると、メンタライジングは疲労を招き、ついには不可能になる。

ブルー・ベア・システムズ・リサーチのCEOヨゲ・パテルは、防衛、航空宇宙、民間市場におけるイノベーターである。自身の会社を立ち上げたとき、家族のような会社にしたいと心に決めていた。

しかし、社員が11人になったあたりで、これほど多くの人についてメンタライジングするのはとても疲れることに気づいた。すでに自分の能力の限界を超えている。

とうとう、会社をさらに成長させたいのであれば、もう1つのリーダー層を設けるなど、新しいシステムを導入する必要があると考えるようになった。彼女のメンタライジング能力はやはり限界に達していたのだ。

このようなメンタライジングの問題は、必然的に大規模で複雑なグループにおいて顕著になる。チームのメンバーとの関係を処理する能力は、当然あなたのメンタライジング能力に依存する。

メンタライジング能力が発達していればいるほど、大勢の人と仕事上の関係を維持することができる。しかし、グループ内の他のメンバーのメンタライジング能力も考慮しなくてはならない。

多くの場合、女性はこの側面において男性より優れている。反面、男女いずれかの性別のみで見ると、ナルシシストはとりわけこの能力が低い。また、数学の才のある人は、そうでない人に比べて総じてこの能力が低い。

人によってメンタライジング能力が異なると、どうしても問題が起きる。だから、つい同じような傾向の人を同じグループにしたいと考える。そのほうがメンバーどうしの相性がいいだろうし、相互の意図や考えを自然に理解しやすいはずだからだ。

この考えは間違いなく有益に思われる。ところが、そこには生産性を下げる安易な集団思考をしがちな環境をつくってしまうリスクが潜む。

文化の違いもメンタライジングにとって問題となる。相手が顔に笑みを浮かべているからと言って、その人があなたの発言に満足しているとは限らないのだ。

また、あなたがどれほどそれを望んでいようとも、あなたの話にうなずいている人がかならずあなたに賛同しているわけでもない。

リーダーや経営者には必須の能力

相手の話がニュアンスに富み解釈を必要とするような場合には、効果的なメンタライジングが不可欠だ。昨今のグローバルな環境では、ビジネスがより複雑化し、多様な利害関係者(ステークホルダー)と互いに競合するコンセプトに対処しなくてはならない。

そんな環境では、リーダーのメンタライジング能力が大きくものを言う。測定や評価の対象にあまりならないメンタライジングだが、組織の未来を背負ったリーダーや経営者には必須の能力であると言えよう。

(翻訳:鍛原多惠子)

トレイシー・カミレッリ:オックスフォード大学研究員

サマンサ・ロッキー:オックスフォード大学研究員

ロビン・ダンバー:オックスフォード大学名誉教授

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