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プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク 実は、日本のベースボールは衰退の危機に突入

東洋経済オンライン / 2024年10月25日 12時0分

すると「どうして地上波は野球放送をしなくなったのか?」と問われます。それを「つまらないオワコンだから」とすると、理由は「子どもが小さい頃から野球をやらなくなったからだ」になります。つまり堂々めぐりです。でも、すべてをテレビ局のせいにはできません。

超人たちを800人集めるシステムが継続しても、数十年後にスタジアムに足を運ぶ人たちが今と同じ数だけ確保できる見通しはありません。裾野が枯野になっているからです。

そして、そのことに気がついて、危機感をもっているプロチームも出てきました。チームは年間に143試合でも、「子供野球教室」を県内で数百回やっているチームもありますし、親に連れてきてもらったスタジアムで、ホームチームのユニフォームをプレゼントしたり、各種イベントで現役スタープレーヤーが直接ファンに触れ合ったりする回数も増えつつあります。

興行にとどまる限り「流行り廃り」に左右

そしてそのとき、本腰を入れている球団が常に意識しているのが、球団が「地域とともにある」というコンセプトです。
これはプロ野球関係者がようやくサッカーやバスケットボールの成功を理解して、「リーグ全体の利益のためにこそ地域ごとにファンを大切にする」努力をしているということです。その意味でも、あらゆるスポーツにおいて、競技の水準が急激に上がるミドルティーンくらいの子どもたちにとっても、この「地域密着」運営は非常に重要です。

スポーツが娯楽としての「興行」にとどまっているとき、それは文化となり得ません。なぜならば興行として飽きられて見限られたら、その競技そのものが終わってしまう可能性が高いからです。

大企業の福利厚生経費で運営されている競技は、不景気になれば真っ先に廃部にされて、「お金がないからなくなる」、つまりそれは「流行り廃り」の興行にとどまります。

たとえば、なかなかプロ化が進まない、それでいてたくさんの競技人口を抱え、長い伝統を誇るバレーボールを運営していたVリーグ(セミプロリーグ、2018~2024年)で、大企業の福利厚生費ではなく、地域に支えられた密着運営をしているのが、男子は「堺ブレイザーズ」と女子は「岡山シーガルズ」です。2024年10月から始まる新しいバレーボールのリーグ、SVリーグもまだセミプロです。

スポーツが地域「文化」となる

ある競技が、「目の前で超人たちが奇跡を見せてくれる」喜びを享受する、地域の人々による広い裾野で支えられたとき、それは人々の生活や人生とシンクロし始め、「甲子園には出られなかったしドラフトにもかからなかったけれど、地域リーグ(四国アイランドリーグなど)や地元クラブチームで野球を続けられる」ことになり、「この街はスポーツをスイッチにして、経済も社会交流も教育もみんな連動している」というシビック・プライドを生み出し、それはすなわち、スポーツが地域「文化」となることを意味します。

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