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プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク 実は、日本のベースボールは衰退の危機に突入

東洋経済オンライン / 2024年10月25日 12時0分

地域密着の競技運営が「その競技のスポーツ・キャピタル(競技資本)」という基盤づくりを積み上げていき、それが興行ではなく「文化」として継承されるのです。

競技名をいろいろ入れ替えてみれば、地域密着してプロ化に成功した競技、それに向けて発展中の競技、そしてどうしてもそこへ着地できない競技などがわかります。

そして、まさにプロ野球という長い歴史を誇る競技団体の中においても、さまざまなコントラストが浮上します。

地元の地方テレビ局の利益を守るために、ネット放送コンテンツと契約をあえて結ばず、選手の年俸は抑え気味ではあっても、若手選手を育成から丁寧につくり上げ、地域のファンとともにその成長を見守る球団があります。「親会社」はなく、長年支え続けてきた地元企業の経営者個人が大株主です。

その地元企業の業績が悪化すれば、その株は市民がシェアすることになるでしょう。ベースボールはなくなりません。なぜならば地域に根づいているからです。

20世紀のビジネスモデルとしての野球

他方、地域属性が曖昧で、親会社を自称する大企業の「宣伝広告費」を税制慣習上特例的に援用して、スーパースターばかりを大金で連れてくるような20世紀的やり方は、裾野も基盤も軽視して、超人たちだけで行われる興行モデルからの離脱がなされていないように思われます(個々の選手には何ら責任はありません)。

伝統的に、日本の職業野球団の運営は、マス・メディアを中心になされてきました。購読者数を増やすためです。夏の高校野球は朝日新聞、春のセンバツと社会人都市対抗は毎日新聞、そしてプロ野球は読売新聞です。まさに20世紀ビジネスモデルです。

亜熱帯の「亜」が取れてしまった灼熱の極東の島国で、日本で2番目の発行部数を誇る全国紙が、郷土の誇りなど希薄になった、身体を削って行われる酷暑の全国大会を今もなお延々と続けています。未来を考える球児はもう最初から海外でのプレーを考え始めています。

悪意のないプチ・フェイク

もし、ベースボールを主導する人たちが、自チームの利益にとどまらないスポーツ全体の未来への視点をもつなら、自らの歴史的役割(ベースボールの魅力を全国規模に広げたこと)の転換点を自覚し、加速化する裾野の枯野化を防ぐ、真の意味でスポーツが地域に根ざすものとして文化になる、21世紀コンテンツをつくり上げるべきだと思います。まだお客さんがたくさん来てくれる今がチャンスです。

トップ800人のリクルート・システムを整備しつつ、いつの日か「今日は比較的お客さんが入りましたね。9000人です」などとアナウンスされる日が来てしまうのでしょうか? 長い年月に引きずられた「野球こそ国民的娯楽の王様」という「悪意のないプチ・フェイク」に気づき、ベースボールを残してくれた先人たちの尽力に恩返しをしたいという気持ちです。

岡田 憲治:政治学者/専修大学法学部教授

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