KDDIが"デュアル5G戦略"で手にした大きな成果 通信品質で国内首位に立った背景に2つの要因
東洋経済オンライン / 2024年10月25日 7時0分
一方、「信頼性エクスペリエンス」は、4Gや5Gを含むすべてのネットワーク技術において、ユーザーが安定して接続し、必要なタスクを完了できる能力を評価する指標だ。この指標は、接続の可否や安定性、ウェブページの閲覧やアプリのダウンロードなど、ユーザーが意図したタスクを問題なく完了できるかどうかも含めて評価している。
この2つはネットワーク品質を表す総合的な指標となっている。KDDIは一貫した品質部門ではソフトバンクを僅差で上回り1位を獲得。信頼性エクスペリエンスではドコモ、ソフトバンクを抜いて首位に立った。
衛星干渉緩和の影響
KDDIの躍進の大きな要因となったのが、衛星干渉の緩和だ。サブ6帯は、従来、衛星通信との干渉を避けるため出力が制限されていた。しかし、2024年3月末に衛星事業者との調整が完了し、制限が大幅に緩和された。
KDDIの前田大輔執行役員は「制限緩和により、サブ6の基地局の出力を最大限に引き上げることが可能になった」と説明する。KDDIによれば、この結果、サブ6のエリアが約2.8倍に拡大したという。
もう1つの要因は、KDDIの周波数帯運用にある。前田氏は高評価の要因を「当社のデュアル5G戦略が功を奏した結果」と説明した。
デュアル5G戦略とは、既存の4G周波数を5Gに転用する4G転用周波数と、新たに割り当てられたサブ6の周波数帯を組み合わせて使用する戦略だ。
前田氏は「既存の周波数を用いた転用周波数の5Gとその上のサブ6のデュアル5Gで展開しており、しかも業界最多のサブ6基地局数で高密度に打っている。このデュアルの5Gが今の時点で構築できているのはKDDIだけ」と付け加えた。
前田氏は続けて「転用周波数の5Gがベースにあるので、サブ6を高密度に打つことができる」と述べ、この戦略が高品質な5Gエリアの効率的な構築につながったことを強調した。
興味深いのは、業界最大手のNTTドコモが、なぜこの競争で出遅れたように見えるのかという点だ。KDDIの観察によれば、その理由は5Gネットワークの構築アプローチの違いにあるという。
KDDIの西村朋浩エリア企画室長は「ドコモさんはサブ6から5Gエリアを展開されているように見える」と述べている。これに対し、KDDIとソフトバンクは4G転用周波数を先行させる戦略を取ったという。
西村氏は「サブ6のみでエリアをカバーしようとすると、どうしても薄く広くなってしまい、速度低下や品質劣化につながる可能性がある」と分析する。一方、KDDIの戦略では4G転用周波数で基盤を作り、その上にサブ6を効率的に展開できるため、より高品質なエリア構築ができたというのだ。
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