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KDDIが"デュアル5G戦略"で手にした大きな成果 通信品質で国内首位に立った背景に2つの要因

東洋経済オンライン / 2024年10月25日 7時0分

通信品質向上がもたらす体験の変化

通信品質の向上は、ユーザーの日常的なスマートフォン利用にどのような変化をもたらすのか。KDDIは特に動画視聴とオンラインゲームの体験向上を強調している。

サブ6の展開が進んだことで、20Mbps以上の通信速度を確保できるエリアが95%まで拡大した。外出先でも高画質な動画の読み込みが早くなり、動画ストリーミングサービスを利用しやすくなるということだ。

オンラインゲームなどで重要となる通信の応答速度(レイテンシー)も改善されている。KDDIの説明では、30ミリ秒以下のレイテンシーを確保できるエリアが92%に達したという。

KDDIはこれらの改善効果を、実機によるデモンストレーションで示した。動画のダウンロード時間の短縮や、ソーシャルSNSのゲームのキャラクターの動きがよりスムーズになる様子が確認できた。

今後、Massive MIMO(マッシブマイモ)と呼ばれる技術の導入や、保有する2つのSub6ブロックを同時に利用できる小型装置の展開を計画しているとKDDIは説明している。

MIMOは、Multiple-Input Multiple-Output(多入力多出力)の略で、多数のアンテナを使用して同時に複数の通信を行う技術。従来の基地局よりも格段に多くのアンテナを使用することで、通信容量の増大と通信品質の向上を実現する。甲子園球場での実験では、Massive MIMOの導入により通信速度が約1.6倍に向上した。

また、KDDIが保有する2つのサブ6ブロックを同時に利用できる新たな装置の開発も進んでいる。サムスン電子製のMassive MIMO装置で、限られたスペースでより高速な通信が可能になると期待される。前田氏は「来年度以降、さらに高速なネットワークをお届けしたい」と話す。

一方で、こうした通信品質の向上をユーザーに実感してもらうことの難しさも課題として挙げられた。前田氏は「つながることが当たり前になっている中で、品質向上をどう伝えていくかは課題」と認めている。

スマホと衛星の直接通信でさらなる拡大

KDDIは、衛星とスマホが直接通信する技術の実用化に取り組んでいる。前田氏は「衛星とスマホの直接通信の実証実験をいよいよ開始する」と述べ、年内にもサービス開始を目指していることを明らかにした。

この技術は、高速・大容量の通信を提供するものではないが、KDDIはこれを山岳地帯や離島、災害時の通信手段として活用することを計画している。具体的には、圏外エリアでのテキストメッセージの送受信や、緊急時の位置情報の共有などが可能になる。

KDDIはアメリカの衛星通信会社Starlink(スターリンク)と提携し、この新しい通信サービスの開発を進めている。前田氏は「アメリカからの免許が発行され、日本でも実験局免許が下りた。制度整備についても総務省に多大なご協力をいただいており、年内に進む見込みだ」と説明した。

戦略的な5G展開と衛星干渉緩和の追い風により、国内通信品質で首位に立ったKDDI。Massive MIMOや衛星直接通信など次なる技術革新も視野に入れ、さらなる通信品質の向上を目指している。「つながって当たり前」の時代において、利用者が実感できる通信品質の向上をいかに実現していくか――同社の取り組みは、モバイル通信の新たなステージを切り拓こうとしている。

石井 徹:モバイル・ITライター

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