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アメリカ社会「分断」の根底にある"ふたつの聖書" バイデンとトランプが宣誓に使った聖書は別物

東洋経済オンライン / 2024年10月26日 18時0分

特に南部は奴隷制度の差別が根強く残っているので、統合するのは非常に困難になっています。対立しているわけではないですが、差別ゆえに統合はできない状況です。

アメリカでは1滴でも非白人の血が入ったら、そこからは非白人と見なされます。1滴でも黒人の血が入っていれば黒人です。だから、オバマ大統領も実は同様で、彼も黒人です。

民主党の歴代の大統領候補は、あまり宗教を前面に出しませんが、オバマさんやハリスさんなどの黒人の民主党の候補の方が、白人よりは宗教心が強いのを感じます。黒人教会に所属しているというアイディンティティがどこかにあると思います。

オバマさんが大統領になったときに、公民権運動にかかわっていた黒人の牧師が、「ついに黒人大統領が誕生した」と号泣するシーンがでてきました。

カマラ・ハリスさんも熱心な信者かどうかはわかりませんが、彼女の所属は黒人バプティスト教会で、その系統はキング牧師までたどれます。ハリスさんには、公民権運動と黒人バプティスト教会というバックグラウンドがあると思います。

――黒人バプティスト教会と白人バプティスト教会では支持する政党は違うのでしょうか?

松本氏 そこまで明確ではないと思いますがあると思います。特に州によっても違います。バイブルベルト、南部の州にいるバプティストの白人教会の人たちは共和党のかなり保守的な人たちです。

トランプが使う「カルヴァン派の長老派」の聖書

――トランプはカルヴァン派の長老派と聞いていますが、彼は福音派といえるのでしょうか?

松本氏 福音派という言葉のもともとの意味と、いまアメリカで使われている言葉の意味が違います。

もともとは聖書にある福音書を忠実に守り行動する人たちです。「福音」とはキリストの言葉で、キリストの弟子たちがキリストの生と死、復活までの言動を福音書にまとめました。

聖書に書かれていることを忠実に解釈するという傾向がある中で、極端になっているグループがアメリカでいうキリスト教福音派と呼ばれる人たちです。この人たちはトランプさんを支持し、人工妊娠中絶に反対し、同性婚を絶対に認めません。

このような南部、バイブルベルトにいる「原理主義者」の政治宗教グループを指して、アメリカでは「福音派」といいます。

トランプさんは母親がスコットランド系の長老派です。カルヴァン派はフランスに生まれたカルヴァンが源流で、それが、16、17世紀にスコットランドに伝播しました。そして、そのスコットランド系のアメリカ移民たちに広まったのがカルヴァン派の長老派です。

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