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アメリカ社会「分断」の根底にある"ふたつの聖書" バイデンとトランプが宣誓に使った聖書は別物

東洋経済オンライン / 2024年10月26日 18時0分

アメリカでは大統領に就任するときに、聖書に手を置いて宣誓します。トランプさんが使った聖書はリンカン大統領が使った聖書のレプリカです。本物は貴重過ぎて持ち出せないのでレプリカでした。

そのレプリカの上に、母親のカルヴァン派の長老派の聖書を置き、そこに手を置いて宣誓式を行いました。だから、彼自身はカルヴァン派の長老派であるとオフィシャルに見なされています。

だからといって、トランプさんが敬虔な信者ではあるかどうかは議論の余地がありますが、彼を支持しているキリスト教福音派の人たちは、そのように見ています。

福音派の人たちの話では、トランプさんは常に聖書を持っていて、演説をするときなどは、聖書のここにはこう書かれていると、そして、これはお母さんから引き継いだもので、カルヴァン派の長老派の聖書であると話すそうです。

カトリックとプロテスタントは使う聖書が違う

――今年の4月にトランプは「God Bless The USA Bible」というトランプ版バイブルを出して、バイデンと宗教対立をあおっているという見方がありましたが、どのようにお考えでしょうか?

松本氏 バイデンさんとトランプさんとは聖書が違います。バイデンさんはカトリックです。カトリックは旧約聖書と新約聖書を教典としています。彼はアイルランド系の移民の子孫です。

彼の先祖は1845年頃にアイルランドで大飢饉が起き、命からがらアメリカにわたってきました。そのような極貧な状況から這い上がったアイルランド系アメリカ人のアイディンティティはすごく強いのです。

バイデンさん自身はそれほど貧乏ではありません。彼の父親が蓄財に成功し、社会的にステータスを確立しました。

そのようなアイルランド系アメリカ人であることを、バイデンさんは労働者階級を取り込むためもあって聖書を使いながら演説します。

アメリカにおいてカトリックは少数派です。カトリックであるアイルランド人が、飢饉でアメリカに来た頃は、ひどい差別を受けて虐殺もありました。白人のプロテスタント、いわゆるWASP(White Anglo-Saxon Protestant、ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)から、カトリックは汚い奴で識字率も低いし、肉体労働しかしない奴らだと、差別を受けてきた歴史があります。

そこから、バイデンさんの先祖が頑張って這い上がるのですが、そのときの精神的支えが聖書でした。

どちらの聖書にも「中絶はだめ」とは書いていない

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