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アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ

東洋経済オンライン / 2024年10月26日 20時0分

だが、使用者団体と労働者団体の間で、6年で60%強という、大幅な賃金の上昇が約束されたことの意味は小さくない。港湾の閉鎖が長期化し、サプライチェーンに大きな問題が生じる懸念はなくなったものの、この先賃金上昇圧力が一段と高まる可能性は残ったことになる。

アメリカの労働者のストといえば、昨年秋に全米自動車労働組合(UAW)が大規模なストを行い、4年半で25%もの大幅賃上げを勝ち取ったことが記憶に新しい。それでもFRBはこれまで、労働市場の逼迫が賃金の上昇につながっている兆候はないとの見方を示していたし、実際に賃金の上昇がインフレを加速させるほどに深刻なものとなっていなかったのは確かだろう。

もっとも、労働者から見れば、企業の好決算が相次ぎ、S&P500種指数などの指標が史上最高値を何度も更新するという状況下で、自分たちの給料が思ったほどに上がらないという事態に対して、不満がかなり高まっている可能性が高い。

自動車労働者や港湾労働者のストを見て、今後、他の業界の労働者も賃上げ要求を加速させることは十分に考えられるし、それがこの先賃金上昇圧力を改めて強めることがあっても、何ら不思議ではないとみておいたほうがよい。

また企業のコスト意識の高さも、この先無視することはできなくなってくるかもしれない。確かに、1日に発表された9月ISM製造業景況指数のうち、価格指数は48.3と8月の54.0から大幅に低下しただけでなく、2023年12月以来、50の節目を割り込んだ。

だが、9月に発表されたフィラデルフィア連銀やNY連銀の製造業景況感指数でも、価格指数は高水準を維持している。特に6カ月後の見通しは前月の8月から大きく上昇した。つまり、企業がこの先の支払いコストが上昇するとみているということは、FRBが重視しているインフレ期待の上昇につながる可能性が高く、こちらもインフレ再燃の兆候とみることができるだろう。

インフレが今後再燃する可能性は決して低くない

一方で足元の物価指標は、落ち着いた状況が続いている。消費者物価指数は今年4月以降、前年比での伸びが前月を下回る状態が続いている。またFRBが重視するとされる個人消費支出(PCE)は、8月には前年比で2.2%増、食品とエネルギーを除くコア指数で2.7%増にまで低下している。

だが、10日に発表された9月の消費者物価指数は、総合指数が前月比で0.2%増と、食品とエネルギーを除いたコア指数が同0.3増%と、ともに予想を上回る伸びとなった。また前年比でみても総合指数が2.4%増と、引き続き8月を下回る伸びにとどまったが、コア指数では3.3%増と、前月よりも伸びが拡大した。

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