石破首相が提唱「アジア版NATO」は実現可能か? 現実に独裁国家が核の力で現状変更を考えている
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 17時0分
2024年10月、石破茂政権が誕生した。石破首相は、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想など、安全保障について意欲的な発言をしている。日本を含む東アジアは、ロシア・中国・北朝鮮などの権威主義国家に囲まれている。北朝鮮はミサイルを撃ち続けている。日本の平和を維持するために、いま本当に必要なこととは——。橋爪大三郎氏の最新刊『火を吹く朝鮮半島』より解説する。
NATOとは何か
世界を見渡してみると、いちばんうまく行っている集団安全保障の仕組みは、NATO(北大西洋条約機構)である。その仕組みと役割を考えてみる。
もともとNATOは冷戦期に、西ヨーロッパの諸国を、ソ連(ならびにワルシャワ条約機構)の脅威から守るために結成した軍事同盟である。イギリス、フランス、ドイツ(当初は西ドイツ)など、主要な国々が加盟している。
イギリス、フランスはまもなく核兵器を保有した。そして、(北大西洋なのだからか知らないが)アメリカが入っている。複数の核保有国が束になっている。その団結の力で、ヨーロッパの西側諸国全体の安全を保障する仕組みだ。
集団安全保障だから、加盟国のどの一国が攻撃を受けても、加盟国全体に対する攻撃だと考えて、集団的自衛権を行使する。仮想敵国はソ連。NATOに加わることで、余計な戦争に巻き込まれる可能性はない。
冷戦が終わり、ソ連は解体した。仮想敵国は、ソ連からロシアに変わった。そして、旧ソ連圏の東ヨーロッパの国々が続々NATOに加入した。NATOの東方拡大である。
NATOの役割は、外敵に侵略されないこと。そして、加盟国同士が、互いに敵対しないこと。ソ連(ロシア)という共通の敵をもつことで、結束できた。NATOは、成功した集団的安全保障の仕組みである。ウクライナは、NATOに加盟していなかった。だから、ロシアが侵攻する余地があった。
「アジア版NATO」は実現可能か?
東アジアには、集団的安全保障の仕組みがない。東アジアにNATOにあたる、集団的安全保障の仕組みをつくることは可能だろうか。いうなればNPTO(北太平洋条約機構)のような。
これは、むずかしいと思う。第一に、核保有国が(アメリカを除けば)いない。日本も韓国もフィリピンも、核をもっていない。台湾にもない。オーストラリアにもない。
第二に、台湾はアメリカとも日本とも韓国とも国交がなく、国際的に孤立していて、集団的安全保障の仕組みに組み込むのがむずかしい。
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