石破首相が提唱「アジア版NATO」は実現可能か? 現実に独裁国家が核の力で現状変更を考えている
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 17時0分
こうした事情があって、東アジアの西側諸国は、それぞれが単独でアメリカとペアの軍事同盟を結び、アメリカの核の傘を頼りにしてきた。だから、北朝鮮のような挑戦的な核保有国が現れて、脅しをかけると、アメリカの腰が引けてしまい、安全保障の枠組みがぐらついてしまうのである。
西側同盟(Western Alliance)とは、自由を報じる西側のなるべく多くの諸国が同盟して、自分たちを防衛する集団的安全保障の仕組みである。NATOを世界全体に拡大するもの、と思えばよい。
現実には西側同盟は、まだ存在していない。架空のものである。ただ世界は、機能しない国連にかえて、西側同盟を世界の平和を守る主役に育てていくだろう。
西側同盟を実現する手っ取り早い方法のひとつは、東アジアの国(たとえば、日本)がNATOに加入してしまうことである。NATOは「北大西洋」を看板に掲げているから、大西洋と縁のない日本が加盟するのはさすがに唐突かもしれない。でも、日本が加盟するとしたら歓迎する、と言ったヨーロッパの政治家がいたともいう。
「北大西洋」が名前だけの問題なら、変えればよい。ただ安全保障には実際には、地理的、地政学的な要因がどうしても絡んでくる。ヨーロッパと東アジアは離れすぎている。東アジアの国がいきなりNATOに加わっても、ほかの加盟国を守ることができるのか、ほかの加盟国が東アジアの国を守ることができるのか、という問題がある。
西側諸国のなかでアメリカだけが、世界中に軍事的プレゼンスを維持している。ひとりで西側同盟の役割を果たしているようなものだ。かつては大英帝国が、似た役割を果たしていた。経済力が図抜けた覇権国は、強大な軍事力を展開して、世界の平和と秩序に責任をもつのである。
台湾有事を横目でにらんで、イギリスの空母やドイツの艦船、航空機が何度も東アジアにやってきた。西側同盟を志向する活動だ。ウクライナ戦争では、西側諸国が武器や兵器を融通し、ウクライナ軍を支援した。
台湾有事の際には、同様の支援がヨーロッパの国々からも寄せられると思う。地理的な要因をすっかり克服はできなくても、地理的な要因を乗り越える努力は可能なのだ。
日本人がいま考えるべきこと
西側諸国が固い同盟をつくって牽制するなら、権威主義的な国家も勝手なことはできない。中国も、北朝鮮も。だが、東アジアは西側諸国がまばらで貧弱な地域だ。核を手にした中国や北朝鮮や、ロシアの勢力をはねのけるのはむずかしい。
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