「セクシー田中さん」の問題で我々が学んだ事とは 不幸な事件がもう2度と繰り返されないために
東洋経済オンライン / 2024年10月28日 16時0分
『鬼滅の刃』の経済規模は約1兆円といわれるなど、いま漫画ビジネスは日本の次なる輸出産業として活況を呈している。一方で、漫画作品を広げていくにあたり、その扱い方を誤ってしまうと、悲惨な事件につながってしまう例も。
今回は、『セクシー田中さん』をきっかけとした、作品のメディア化にまつわる課題について、漫画専門のシンクタンク代表である菊池健氏の著書『漫画ビジネス』から、一部を抜粋してお届けする。
漫画家が持つ4つの権利
2024年1月29日、漫画家の芦原妃名子さんが自ら命を絶たれました。
自身の作品『セクシー田中さん』(芦原妃名子/小学館)がTVドラマとして映像化された際に、映像化に伴う作品の改編がTV局側から頻繁に伝えられ、それに対して自身の思うところを伝えるなどやり取りを繰り返した末、ままならぬままさまざまなプレッシャーが作家自身にかかり、そのうえでのことでした。
X(旧ツイッター)に「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい。」という一言を最後にしてという痛ましい事件でした。
なぜ、このようなことになるのかという点を少し整理します。
漫画家は作品をつくった時点で、著作権と著作者人格権という2つを持ちます。著作権は、著作物からお金などを得る権利です。著作者人格権は、著作物を作ったことによる「精神的利益」を保護するもので、以下の4つの権利があります。
① 公表権(著作権法18条)=著作物を公表する権利
② 氏名表示権(同19条)=著作物公表の際に氏名を表示する権利
③ 同一性保持権(同20条)=著作物の題や内容を勝手に改変されない権利
④ 名誉声望を害する方法での利用を禁止する権利(同113条11項)=著作物が著作者の名誉を害するような方法で使われない権利
マンガは、その作品のほとんどすべてを、漫画家の全身全霊で織りなします。そのため、作品に対する作家の感覚は、わが子のような感覚とよく例えられます。それを守るのが著作者人格権です。そうして作品に思いが募るほど、面白い作品ができるわけです。
出版社が漫画家と作品をつくり出版する場合、雑誌や本、ウェブサイトに作品を掲載する「出版権」を得て、作品を販売できるかたちにして流通・販売して売り上げをあげるというのが一般的な流れです。
その後、出版した作品を映像化する際、出版社の編集者やライセンス担当者は、作品がより良い映像になるように、かつ、作家の著作者人格権を守るために作品づくりに忙しい作家に代わり、代理人のような仕事をします。
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