利己的だった故・稲盛氏が失敗から学んだ経営術 30年に渡って支えた特命秘書が語る「氏の言葉」
東洋経済オンライン / 2024年10月28日 16時30分
京セラ、KDDIを創業し、それぞれを大企業に育成した後、会社更生法の適用となった日本航空(JAL)をわずか2年7か月で再上場するまで再建。数々の功績から「経営の神様」と称えられる故・稲盛和夫氏。その言葉や考え方は今もなお多くの人に影響を与えています。
37歳で稲盛氏から特命秘書に任命され、約30年間にわたり最側近として稲盛氏の仕事を間近で見てきた大田嘉仁さんは、稲盛氏の言葉や教えをノートに書き留めていました。その数実に60冊!
「生き方」「リーダー論」「経営」「心のありかた」について選りすぐった稲盛氏の言葉を収録した『運命をひらく生き方ノート』より一部抜粋・編集してご紹介します。
リーダーに求められる5つの条件
あるとき、稲盛さんが大学生や若い社会人が集まった場でリーダーの条件を話す機会がありました。そこで稲盛さんは、リーダーになったら次のような5つの質問を自問自答すべきだと話しました。
・人の心が読めますか?
・部下から好かれていますか?
・人の心の苦しみ、楽しみがわかりますか?
・部下に嫌なことでも命令できますか?
・数字がわかりますか?
とてもわかりやすい内容でしたので、私は稲盛さんの話を聞きながら、「なるほど、ベーシックかもしれないが、これがリーダーの条件だ」と素直に感銘を受け、これこそが稲盛さんのリーダー論の原点なのではないのかと感じました。
そして、この5つの条件は、稲盛さんの若いときの経験から生まれたものだという思いも生まれてきました。
稲盛さんは、最初に就職した松風工業で研究に打ち込み、素晴らしい実績を出し、会社に多大の貢献をしましたが、最終的には新しい技術開発がうまくいかず、新任の上司から「君の能力ではこれまで」と、担当から外されてしまいます。
大きな屈辱を受けた稲盛さんは反骨心を燃やし、「絶対に見返してやろう」という気概を抱いて7人の同志と「稲盛和夫の技術を世に問う」ために京セラを創業しました。
そのとき稲盛さんには、京セラが成功すればこれまで苦労を掛けた両親や家族にも恩返しができるという思いもあったといいます。
利己的な目的で失敗した経験も
業績は順調に推移し、2年目には初めての定期採用として、11名の高卒の新入社員が入社します。
稲盛さんは、彼らも自分たち創業メンバーの思いをわかってくれるだろうと期待していましたが、入社1年後に、彼らは「将来にわたって自分たちの生活を保障してほしい、それでなければ皆辞める」と言い出しました。
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