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利己的だった故・稲盛氏が失敗から学んだ経営術 30年に渡って支えた特命秘書が語る「氏の言葉」

東洋経済オンライン / 2024年10月28日 16時30分

それを聞いたとき、稲盛さんは驚きました。

しかし、よく考えると赤の他人である彼らが「稲盛和夫の技術を世に問う」ために頑張ってくれるはずはありません。しかも、稲盛さん自身には、社員より親孝行のほうが大事だという思いがあったのですから、なおさらです。

このとき稲盛さんは、自分が独りよがりで「人の心が読めず」、新入社員から「好かれてもいず」、新入社員の「心の苦しみも、楽しみもわかっていなかった」ことに気が付いたのではないでしょうか。

当初は、彼ら全員が辞めたとしても新しい社員を採用すればいいと考えたそうです。

しかし、「稲盛和夫の技術を世に問う」という利己的な目的を掲げ、社員よりは自分の親兄弟を優先するような考え方では、きっと同じような結果になってしまうだろう。

それでは、いつまでたっても京セラを成長させことも、自分の技術を世に問うことも、親孝行もできなくなる。どうしたらいいのだろうと、稲盛さんは1カ月ほど悩み苦しみました。

その結果、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という経営理念を作り、経営の目的を利己的なものから利他的なものに変えたのです。

これが、稲盛さんの経営者としての器を一気に大きくする契機となりました。

稲盛さん自身、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念があり、自分は全従業員の幸福の実現のために必死に努力しているという自信があったので、「部下に嫌なことも命令できるようになった」と話していました。

リーダーは数字が読めなくてはいけない

先に挙げた5つの質問の最後にある「数字がわかりますか?」という問いは、経営において具体論がいかに大事かを教えています。つまり、経営者は人の心が読めるだけでなく、数字も読めなければならないのです。

これも稲盛さんの京セラ創業時の経験から生まれた言葉でしょう。

技術者であった稲盛さんは、京セラ創業当初、経理も会計も何もわからなかったといいます。それでは経営はできないと心配になり、当時の経理部長に教えを請い、また独学でも学び、専門家にも負けないくらいの会計知識を身につけるのです。

その内容を記したのが稲盛さんのベストセラーの1つである『稲盛和夫の実学』(日経ビジネス人文庫)です。本の帯に「会計がわからんで経営ができるか!」とあるように、経営者は「数字がわかる」ことが不可欠なのです。

稲盛さんが若い聴衆に投げかけた「人の心が読めますか?」「部下から好かれていますか?」「人の心の苦しみ、楽しみがわかりますか?」「部下に嫌なことでも命令できますか?」「数字がわかりますか?」という5つの質問は、稲盛さん自身の若いときの経験から生まれたものであり、だからこそ説得力があるのだと私は感じ、感銘を受けたのです。

大田 嘉仁

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