JR西日本、「3Dプリンター」で駅舎建設の現実味 和歌山で実証実験、コスト大幅削減を目指す
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 9時30分
3Dプリンターで駅を作る。一見して突拍子もない構想だが、着々と現実味を帯びてきている。2024年10月、幕張メッセで開催された「CEATEC 2024」。JR西日本のブースでは、3Dプリンター技術を用いた駅舎建設の取り組みが紹介された。
この取り組みは、JR西日本の子会社であるJR西日本イノベーションズが、3Dプリンター住宅技術を持つスタートアップ企業のセレンディクスと5月に結んだ資本業務提携に基づくものだ。両社の提携では鉄道施設の建設に新たな手法を導入することを目指している。
限られた人員で運営できる駅
JR西日本は、設備維持のための労働力不足という大きな課題を抱えている。同社は長年にわたって「駅のシンプル化」を進めてきた。駅舎や設備をより単純な構造にし、維持管理の負担を軽減し、限られた人員でも効率的に運営できるようにする狙いだ。
しかし、駅舎の建て替えや改修には依然として多くの時間と労力が必要だ。JR西日本の担当者によると、現在のシンプルな駅舎の建設でさえ「1ヵ月から2ヵ月くらい」という。さらに駅の建て替えには「営業線近接作業」と呼ばれる電車の運行に配慮した厳しい制約があり、多くの工事が夜間に限定されるなど、時間的な制約も大きい。
こうした背景があり、3Dプリンター技術の導入は、JR西日本にとって駅のシンプル化を推し進めるための重要な試みだ。
セレンディクスは、2018年8月に小間裕康氏と飯田国大氏によって設立された比較的若い企業。「車を買える値段で家が買える」という世界観を目指して、3Dプリンター技術を用いた小型住宅建設に取り組んでいる。
同社は2023年5月に長野県佐久市で初の商用物件を22時間52分で完成させるなど、超短期間での建設を実現している。「serendix10」(10平米)や「serendix50」(50平米)などの住宅モデルを開発し、球体構造の住宅を24時間以内に建築することを目指している。さらに、「100平米 300万円」という低コストの住宅販売を目標に掲げている。
和歌山エリアで実証実験を計画
セレンディクスとの提携に基づく新駅の実証実験は、JR西日本の和歌山エリアで計画されている。2025年の春までをめどにローカル線の1駅を3Dプリンターで建設し、効果を検証する。成果が得られれば、この技術はほかのエリアへと横展開する方針という。
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