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「非ミニマリスト」の89歳、モノを捨てない住まい方 "終活"とは逆行でも「いらないものなんてない」

東洋経済オンライン / 2024年10月30日 8時0分

じっくり考えて決めたいことも宿題のように山小屋に持ってきて、頭の中をリセットしてからあれこれ考えを巡らせて、結論を出したりします」

小森さんの「住まい遍歴」

ここ数年、若者を中心に「ソロ活」がブームになっている。ソロ活とは「ソロ(単独)」と「活動」を組み合わせた造語で、1人で好きな場所に出かけ、好きなことをして過ごすこと。

小森さんは20代の頃から、旅行や登山などをソロ活で楽しんできた。旧ソ連や北欧、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど多くの国を訪れ、毎年のようにお気に入りの山々に登っていた。

特にソロ活の1人時間が味わい深いものになってきたのは、51歳で幼稚園を退職してからだという。

「私から“先生”という肩書が取れて、小森祥子という素の自分に戻る。身一つになった解放感は大きなものでした。朝、起きて天気がよければ車で遠出したり、旅行は行先だけ決めて出発したり。

出かける先々で、美しい風景もご飯のおいしさも自分のペースで味わえますよね。大好きな山歩きのとき、可憐な草花を見つけたら心行くまで眺めていられる。同行者がいると、そうはいきません(笑)」

1人で自由に好きなことに浸る時間は、この世に1人しかいない自分を大切にする時間だ。「シニアソロ活」を絶賛実践中の小森さんは、定年退職をした人、子育てや主婦業を卒業した人たちにこそ、ソロ活を勧める。

「1人でやりたいことができる、行きたいところに行けるという経験は、これからの老後の自信にもつながると思います」

小森さんのシニアソロ活の充実ぶりは、住まい方にも大きな変化をおよぼしている。

20代で暮らした木造アパートを振り出しに、2度の引っ越しを経て、38歳のときに360万円で都心のマンションを購入。それまでは、どの住まいも家賃と交通の便を優先して、一間暮らしだった。

幼稚園教諭の他に生活費の足しにと副業を掛け持ち、20代で加入した東京ユース・ホステルでは事務局長を務めるなど、公私ともに多忙を極めていた現役時代。当時の小森さんにとって「住まいは活動地点」でしかなかったのである。

「非ミニマム」な住まい方

しかし、あらゆる肩書から下りて、65歳のときに次姉の家にも近い神奈川県川崎市の3LDKのマンションを購入後、ソロ活の道具や材料が爆増していく。

調理師資格を持つ腕前の料理、お茶に仕舞、編み物、折り紙、ハンドクラフト、旅行……。それらのソロ活の成果を惜しみなく「人をもてなす」ことに活用する小森さんは、来客用の和洋中の食器やグラス、プロ仕様の調理器具などを数多く所有している。

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