1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「非ミニマリスト」の89歳、モノを捨てない住まい方 "終活"とは逆行でも「いらないものなんてない」

東洋経済オンライン / 2024年10月30日 8時0分

お茶道具や着物、大小のスーツケースなどの大物以外にも、旅先で買い求めた思い出の品々や友人からの贈り物など、心を癒す小物も増える。

「部屋が3つあるので、寝るときは寝室、おもてなしはあっちの部屋、手仕事はこっちの部屋と移動しながら、全室フル活用していました」と笑う。1人暮らしの3LDK全室が、小森さんの活動地点そのものだったのだ。

そんな15年間の勢いある住まい方に幕を閉じ、80歳のときに移り住んだ人生最後の住まいは17畳の一部屋。再びの一間暮らしとなる。

グループリビング・おでんせ中の島に入居するにあたって、どう考えてもほとんどのものを処分しないと17畳の居室には収まらない。

小森さんは手放せないものを3つに分け、取捨要検討の箱も作る。要検討は主に来客用の食器類や値の張る鍋、調理器具たち。これが大きな段ボール10箱にもなった。

さて、これをどうしようかと考えた小森さんは、パッと閃いて、行きつけの美容室に相談したという。

「女性スタッフが10人もいる大きな美容室なので、皆さんが欲しいものがあったらもらっていただき、残ったものは捨ててほしいとお話したら、『ぜひ!』と言ってくださったので、10箱すべて差し上げました」

手放したくないものは、折に触れて何度も読み返してきた本。著名な陶芸家だった父の作品のお茶道具。茶碗は30~40個にもなる。

それから着物。1/3は親しい人へ、1/3は姪や甥の結婚相手に着てもらいたくて次姉宅に運んだ。残り1/3がまだ箪笥2棹分もある。

趣味の手芸作品やアルバムの数々、これまでのさまざまな活動の記録や写真集も捨てられなかった。とても17畳の一室に収まる量ではない。

小森さんはそれらを要・不要で選別することはできなかったし、前に流行した「ときめくかどうか?」という取捨の線引きも、答えは「全部ときめく」だった。

「断捨離」や「終活」と逆行

だが、おでんせのオーナー・藤井康雄さんは、入居前に小森さんにこう伝えたという。

「お部屋には大きな収納家具も備え付けてあるし、荷物用のロフトも用意しています。どうしても手放せないものが多くなってしまったら、無理に手放さないで持ってきてください」

この言葉に小森さんは感激した。見学した高齢者向け施設はどこも「荷物は最小限に」というところばかり。

それは当然だろうと思うし、自宅暮らしでも世の中は「断捨離」や「終活」全盛で、モノが多いことを良しとしない雰囲気もある。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください