過去10年で最大の流行「マイコプラズマ肺炎」とは 知っておきたい感染経路、症状、検査、予防、治療
東洋経済オンライン / 2024年10月30日 8時30分
感染しやすいのは子どもで、肺炎を起こすこともある。2015年にアメリカの疾病管理センターを中心とした研究チームが、『ニューイングランド医学誌』に発表した研究によれば、入院した子どもの肺炎患者のうち、22%がマイコプラズマによるものだった。
注目したいのは、この22%のうちの19%が5才以上の子どもだったこと。5才未満は3%にすぎなかった。これは日本の状況とも一致する。感染研の調査によると、7~8才にピークがあるという。
学童期以降の子どもが罹りやすいのは、マイコプラズマの感染の仕方によるところが大きい。
マイコプラズマは飛沫や接触で感染するが、その感染力は決して強くない。新型コロナウイルスのように空気感染はしないし、アルコール消毒で簡単に滅菌できる。
つまり、マイコプラズマの感染には濃厚な接触が必要であり、学童期以降の子どもが濃密に体を接触させながら遊ぶことで、感染が拡大する、というわけだ。
マイコプラズマに感染すると、通常2~3週間の潜伏期を経て発症し、発熱や倦怠感、頭痛などの症状が表われる。そして、その数日後から咳などの呼吸器症状が顕著になる。
特徴は咳や痰、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーする状態)といった呼吸器症状が長引くことだ。これは菌が上気道から肺胞まで、広く呼吸器組織に感染するからだ。
特に気管支、細気管支へのダメージが著しく、組織学的には気道の表面を覆う繊毛上皮が壊され、潰瘍ができることもある。このような呼吸器症状は、組織が再生するまで続く。
肺炎以外では中耳炎、髄膜炎、脳炎、ギラン・バレー症候群などの合併症を起こすことが報告されているが、いずれもまれであり、大部分はそこまで至らず自然に治癒する。
マイコプラズマの鑑別診断は難しい
続いて検査についてだが、マイコプラズマの迅速検査には、「遺伝子検査(LAMP法)」と「抗原検査」がある。前者は鋭敏な検査で、数時間で結果が出るが、普通のクリニックに検査器械は置いていない。
後者は数分で結果が出るが感度が低く、多くの感染者を見逃してしまう。というのも、抗原検査では咽頭拭(ぬぐ)い液を検体として用いるが、マイコプラズマは主として気道の奥のほうに感染するため、十分な菌量を採取できない。この結果、抗原検査が陰性でも“感染は否定できない”ということになる。
症状から診断するにしても、咳が長引く病気はマイコプラズマ感染症以外にも、咳喘息(気管支炎症により咳が続き、咳込みと呼吸困難が表れる病気。主に感染後に発生し、数週間持続することもある)、後鼻漏(こうびろう:鼻や副鼻腔で作られた粘液が、喉のうしろへ流れ落ちる状態。咳や喉の違和感の原因となり、アレルギーや副鼻腔炎で起こりやすい) など、いくつもある。
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