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深谷で「映画と珈琲」を楽しむレトロ散策のすすめ 酒蔵建築や映画ロケ地で「時空を旅する」気分に

東洋経済オンライン / 2024年10月31日 8時0分

上映作品はスタッフによるチョイスと、顧客からのリクエストで成り立ち、メジャーなものから、単館系のものまで幅広く揃う。この日も朝から近所に住まう方が足を延ばし、思い思いの時間を過ごしていた。

見渡せば歴史のある建物と風景に、静寂に包まれた空間。穏やかな時が流れている。過ごせば過ごすほど時空を旅しているかと錯覚する。

映画文化と酒蔵建築を残したい思いが合致する

映画館が全国に多数存在していた頃。深谷市にも豊年座、ムサシノ館、電気館と3館が存在していた。しかし時代の変化とともに全て閉館し、市民が気軽に映画館へ足を運ぶことが難しくなった。

1999年、市内にミニシアターを作ろうと団体が立ち上がり、2002年に現在とは別の地に「深谷シネマ」が誕生した。七ツ梅酒造跡に移転したのは、2010年のこと。旧館は、区画整理事業にかかる場所にあり、移転を余儀なくされていたからだ。

そんなタイミングで見つけられたのがこの七ツ梅酒造跡だった。映画監督の山田洋次氏原作の作品のロケ地として探していたことがきっかけである。

「まるで廃墟のような雰囲気で気に入ったんです。空き家のままになっていた場所を私たちも生かしたかったから、ここに移転したいと思いました」と、深谷シネマを運営するNPO法人市民シアター・エフの理事長・小林真氏は話す。とはいえ移転は決して簡単なことではない。

「初めてこの地に来たときは、建物も崩れかかっていた。映画館となると座席や映写機、スクリーンなど重量のある設備が多いため、荷重に耐える建物として補強することが課題でした。

市民からは『酒蔵を使ってシネマなんて難しいのでは?』という反対もありましたが、この景観を残したかった。その思い一筋で立ち上げました」

シネマは2010年に補助金を活用してリノベーションし、オープン。シネマのある蔵は基礎のない建物だったため、設計士は使える柱を残して補強した。

名誉館長として故・大林宣彦映画監督がサポートをするなど、映画界の著名人に支えられてきた。以降は、NPOが運営している。

小林氏は「深谷シネマがオープン後、七ツ梅を盛り上げようとさまざまな店舗が集まった。この場所に魅力を感じて、『この場所で店をやりたい』と移住してきた人もいるほど。

市民たちがこの場所を愛してくれていることが嬉しい。これからも大切に維持し、多くの人の目に触れてほしい」と胸の内を明かしてくれた。

ミニシアターには独自の魅力がある。穏やかな空間で、〝これぞ”という作品に心をどっぷり捧げて観る時間。その悦楽を求めて遠方からも足を運ぶ人が多い。ふらっと日帰りでタイムスリップする時間は何にも代え難い。

酒蔵の敷地内をねり歩き、ロケ地の雰囲気を味わう

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