深谷で「映画と珈琲」を楽しむレトロ散策のすすめ 酒蔵建築や映画ロケ地で「時空を旅する」気分に
東洋経済オンライン / 2024年10月31日 8時0分
シネマ1つだけでも悠久の時を味わえるが、足を延ばして少し散歩を楽しみ、映画の余韻を味わいたい。
あちらこちらにサインや造作物がある一角がある。このエリアは映画のロケ地としても多用されており、セットがあえて残してあるからだ。
香り高いコーヒーを手作りスイーツとともに味わう
まるでシネマの主人公として街を歩いているかのような気分になる。そこに立ち並ぶのが個性的な飲食店、雑貨店や伝統芸能品を扱う店にワークショップスペース。
そして、疲れたら足を運びたいのが「50 COFFEE & ROASTERY」。世界各国からよりすぐったコーヒー豆を、その場で焙煎し提供するスペシャルティコーヒー店だ。
高さ3メートル以上のある吹き抜けが気持ちいい空間は、酒蔵の瓶詰め工場だった場所。ここにアメリカ製の大きな焙煎機がある。
18年前から市内の別の場所でカフェレストランを始めた五十嵐智氏。もともとコーヒーに関心が高かった氏は、20代の頃に初めて口にしたエスプレッソに感動。
「これは習わないわけにはいかない、みんなに飲ませたい」と浜松町にあるエスプレッソマシンメーカーが主催する、コーヒーセミナーに幾度も足を伸ばしたのは今から30年前のこと。セミナーで試行錯誤したあとは、前職を辞した後にそのまま独立。
しかし、別店舗ではコーヒー豆の焙煎が難しかった。いつか焙煎機を置いたコーヒーに特化した店をやりたいと心に秘めていたときに、五十嵐氏は七ツ梅と出会う。
「まるで世界遺産のような場所だと心を射抜かれた」
すぐに五十嵐氏は出店を決めて、2店目はコーヒー専門店としてオープンした。熱風式の焙煎機であぶられたコーヒー豆は、ふわりとフルーツのような香りが際立つ。
豆はエチオピア産の無農薬豆を主流として五十嵐氏がよりすぐったものを扱う。
口にすると広がる味わいはまるで紅茶のような華やかさと柔らかな味わい。喉を通ると口元に残るのはフローラルな香りだ。
「今まで紅茶やハーブティーしか飲めなかったが、スペシャルティコーヒーをきっかけにコーヒーが飲めるようになったという人が多くいらっしゃる。この体験をぜひ味わってほしい」と五十嵐氏はコーヒー文化をこれからも伝え続けていく。
旅をするとき、定番どころではない観光地にあまり目を向けることがないかもしれないが、土地ごとに知られざる歴史や文化が眠るものだ。一度その魅力を知ると、より深く知ろうと再び街に訪れたくなる。手触りのある文化に触れる、小さな旅ならではの魅力を味わってみてほしい。
永見 薫:ライター
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