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東北の「地味な絶景路線」北上線沿線に何がある? 起点の北上駅は新しいホテルやマンション続々

東洋経済オンライン / 2024年10月31日 6時30分

ハイブリッド気動車HB-E300系「リゾートあすなろ」を改造した2両編成で、1号車はボックスシート中心のグリーン車指定席、2号車は普通車指定席。土休日を中心に盛岡―釜石間や八戸―大湊間などで運行している。北上線を走るのは今回が初だった。

運行当日、ほっとゆだの駅前では地元の飲食店が出店したり、郷土芸能を披露したりする「にぎわいフェスタ」が開催されており、地元の人たちが沿線で旗を振るなどして臨時列車を歓迎した。

北上線の起点となる北上駅は、東側に北上川が悠然と流れ、河畔は桜の名所の「展勝地」となっていて、昭和30年代の歌声喫茶で流行した『北上夜曲』の歌碑が建つ。駅の西側には歓楽街の青柳町。市役所本庁舎や「さくら野百貨店」が入る「ツインモールプラザ北上」はその奥にある。

北上駅は1890年、東北本線を建設した日本鉄道の黒沢尻駅として開業した。合併前の旧北上市が発足した1954年に北上駅に改称。1982年には東北新幹線が開業した。現在は日中、1時間に上下1本ずつの「やまびこ」が停車する。新幹線のホームがある東口と在来線のホームがある西口は地下通路でつながる。0番線が北上線のホームだ。

北上駅前にホテルが新規開業

最近、駅周辺でホテルやマンションの開発が進んでいる。半導体や自動車の関連企業の集積による宿泊・住宅需要が見込まれるという。北上工業団地にはキオクシア岩手、南に隣接する金ケ崎町にはトヨタ自動車東日本というように市の内外に生産拠点が集まっている。奥州市では2025年秋、東京エレクトロンの製造子会社が生産・物流センターの竣工を予定する。

北上駅の東口には2023年11月、大浴場やレストランを備えた「さくらPORT・HOTEL」がグランドオープン。1階には北上観光コンベンション協会が入り、観光案内やレンタサイクルの貸し出しをしている。ホテルに先立って賃貸マンションやオフィス棟、立体駐車場も誕生した。

一方の西口では相鉄グループが2026年秋に「相鉄フレッサイン」ブランドのホテル開業を予定する。相鉄ホテル開発の担当者は「北上エリアは東北新幹線や東北自動車道により交通の利便性が高く、駅周辺には製造業を中心とした複数の工業団地が集積しているため、ビジネス出張の需要が安定的に見込める。また、本用地は北上駅西口至近に位置しており、徒歩でのアクセスも非常によいため、出店を決定した」と説明する。

相鉄グループは2022年12月に九州の熊本市で「相鉄グランドフレッサ 熊本」を開業している。熊本は郊外に自動車関連や半導体企業が所在しており、北上市も「ビジネス需要が見込めるエリア」(相鉄ホテル開発の担当者)という共通点があるという。北上に出店するホテルは地上14階建てで、客室数は167を予定。東北地方では仙台に続いて2店舗目となる。

北上線も厳しい状況

JR東日本の発表資料によると、北上―横手間の2023年度の平均通過人員は1日当たり266人。北上―ほっとゆだ間が388人、ほっとゆだ―横手間が101人となっている。

また、同社が10月29日に公表した平均通過人員が1日当たり2000人未満の線区ごとの収支データによれば、北上―ほっとゆだ間の営業係数(100円の運輸収入を得るためにかかった営業費用)は2738円、ほっとゆだ―横手間は3986円と厳しい状況が続く。

北上線は本数も両数も少ないのが難点だが、沿線には東京駅からも1回の乗り換えで行くことができる。ニューヨーク・タイムズの特集記事で取り上げられた県庁所在地の盛岡市ほど外国人観光客が多く訪れているわけでもない。全線開通100周年を機に改めて注目してみるのもよさそうだ。

橋村 季真:東洋経済 記者

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