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指導者に「大きくて強そうな人」を選ぶ残念な本能 通用しなくなったのに残る石器時代の思考法

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 10時0分

私たちには、背の高い強そうな男性を指導者に選びがちであるという、「進化のミスマッチ」があるそうです(画像:photosvit/PIXTA)

横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。

では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。

今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

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過去数百万年の間に、私たちの脳はどんどん大きくなり、近縁のチンパンジーの脳の3倍に達した。だが、過去20万年ほどは、同じ大きさを保っている。

そこから進化心理学者たち――厖大な時間スケールで人間の精神がどう変化したかに焦点を当てる人々――は、「私たち現代人の頭蓋骨には石器時代の心が収まっている」と結論した。

たとえば、昔、生き延びるために、私たちの心は糖分に対して強い肯定的な反応を示すように配線された。20万年前、糖分はヤムイモや果物などの、栄養上有益な食べ物から得られた。だが、当時の果物はやたらと甘くはなかった。選抜育種などなかったからだ。

進化生物学者のダニエル・リーバーマンによれば、私たちの狩猟採集民の祖先が食べた石器時代の果物の大半は、ニンジンほどの甘さだったという。

私たちの脳は、甘いシリアルではなく、少し甘い果物向けにできている。同様に私たちは、脂肪分を含むものは手に入るときには何でもただちに摂取するように進化した。かつて、人間の食べ物に含まれる脂肪分はとても乏しかったからだ。

私たちは今日、加工された糖分や脂肪分を、かつては不可能だった割合で血流に直接送り込む。それに伴う現代の糖尿病と肥満の急増は、「進化のミスマッチ」の例であり、私たちの体と脳が進化したときの生活様式が、もう存在しなくなった結果だ。

進化心理学者たちも、ミスマッチの例を挙げている。今日、地球上の圧倒的多数の人は、ヘビやクモに事実上まったく脅かされていないのにもかかわらず、それらに対して依然として本能的な恐怖を抱く。だがヘビやクモは、かつて狩猟採集民にとって主要な死亡原因だった。

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