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「なぜ企業は大胆変革できない?」経営学者の視点 「エコロジーベースの進化理論」で深く理解する

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 8時1分

このように企業をひとつの硬直性のある「生物種」と捉えると、「ダーウィンの進化論」が応用できることになる。

結果、業界内における「企業進化のプロセス」が見えてくるのである。

それは「VSRSプロセス」と呼ばれ、次の4つのフェーズに分かれる。

【「VSRSプロセス」のフェーズ1】「多様化」(Variation)

まず1つめは、突然の環境変化などによって、多様な生物種が生まれるフェーズである。

たとえば地球の歴史上では、5億4200万年前から5億3000万年前に発生した「カンブリア大爆発」などが典型だ。

最近のビジネス界でいえば、インターネットの普及でグーグル、アマゾン、ネットフリックスなど、爆発的な数の新しいビジネスが生まれたり、スマートフォンの普及によりおびただしい数のアプリのベンチャー企業が登場したことが該当する。

2023年から世界的に注目されている生成系AI技術は、いま世界でAI関連ベンチャー企業の「カンブリア大爆発」を引き起こしている最中といえる。

【「VSRSプロセス」のフェーズ2】「選択」(Selection)

2つめは、多量に生まれた生物種の中で、時の環境に適応したわずかな種だけが自然界に選ばれ、生き残るフェーズだ。それ以外の種は淘汰される。

たとえば首の長いキリンは、アフリカの草原で高木のアカシアの葉を食べることができた(アカシアは栄養価が高い)。

他にアカシアを食べることができるライバル種がいなかったので、キリンは現代まで生き残ったという説が根強い。

アフリカの環境に、キリンは選ばれたのである。

企業でいえば、多様な技術・アイデア・ビジネスモデルの中でも、顧客ニーズなど時のビジネス環境にマッチした企業だけが選ばれ、他は淘汰されていくということだ。

生き残った企業は「社会的正当性」を得ていく

【「VSRSプロセス」のフェーズ3】「維持」(Retention)

一定の自然環境の中で生き残った生物種は、そこで維持され、我が世の春を謳歌するのが3つめのフェーズだ。

企業でいえば、その市場環境にマッチして生き残り、「社会的正当性」を得た企業は業界の主力企業となり、業績も向上する。

ベンチャー企業の「社会的正当性」の獲得は、たとえば株式の市場公開(IPO)という形で結実する。

【「VSRSプロセス」のフェーズ4】「苦闘」(Struggle)

しかし、やがて環境は変化する。生物はDNA配列を変えられないので、環境変化に適応できず苦闘し、場合によっては死滅する。それが最後の第4フェーズだ。

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