医局に入らないことを決めた医師の"その後" 辞める前に知っておくべき「リスクとリターン」
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 16時0分
今の仕事が合わない。組織を離れて腕を試したい。独立はキャリアの中でもとりわけ大きな意思決定だ。成功した人はどのように考え、判断するのか。『泣くな研修医』『俺たちは神じゃない』など医療小説がヒットする中山祐次郎さんは「暗闇でジャンプ」したと明かす。仕事人生を一段上に上げるためのしたたかな計算とは? 「なぜ働くか」を息子に伝えた『医者の父が息子に綴る 人生の扉をひらく鍵』より一部引用、再編集して紹介する。
組織を離れる時のしたたかな計算
医局に入らない、つまり医者の中でマイノリティ(少数派)として生きると決めた僕は、頭の中でしっかり損得勘定をしていた。計算なしに過酷なほうに飛び込んだわけではない。そこにはしたたかな戦略があったのだ。
実例を示したい。僕の人生をかけた実例だ。
ちょっと説明すると、外科医の9割は医者になってから3年目(まれに6年目)に医局という組織に所属する。医局というのは、「〇〇大学外科学講座」などと名前がついていて、大学ごとに、そして科ごとにある。
自分がどこの大学を出ていても関係なく、だいたいどこの医局にも入ることができる。昔は外科や内科を選ぶ人が多かったのだが、今は大変な割に給料が少なかったり生活の自由がきかないことでだいぶ減ってきたから、どの医局も医者集めに必死だ。
医局に入ると、だいたいそこから15年くらいどんな人生を歩むかが決まる。
一例を挙げると、3年目に入局したらまずはその医局の関連病院と呼ばれる病院に1年ずつ3カ所行く。そこで外科の基本を叩き込まれたら、次は大学病院で3年間働く。その後、よほど他に希望がなければ大学院に入学し、医者をやりつつ研究をする生活を4、5年やって(うまくいけば)医学博士となる。その後はまた関連病院に行き手術の修業を数年し、その後はまた別の関連病院に移るか大学病院に戻るかする。こんな具合だ。
とても整った教育システムであり、かつ地域に定期的に医者を派遣できる仕組みだ。ここに入れば、まあよほどのことがない限りは一人前の外科医になれる。
僕は情報を集めた。医局に入った外科医、入らなかった外科医から話を聞いた。そして自分なりにまとめた結論はこうだった。
「医局に入ると確実に一人前の外科医になれるが、飛び抜けた技術を持つ外科医になれなそうだ」と。そして、「医局に入らないと、下手したらひどい外科医になってしまうが、飛び級をしてより高いレベルの外科医になることができる可能性がある」とも考えた。
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