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定年世代が戸惑う「多様性の時代」の受け入れ方 「高度経済成長期」は迷うほど選択肢がなかった

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 20時0分

どうでしょう? 自分に置き換えてみて、思い当たるような経験はありませんか? 今、私たちが生きている社会が、まさにこの「選択のパラドックス」状態です。

生き方は24種類どころではありません。SNSをのぞいてみれば、無数の他人の人生が目に入ります。働き方1つとってみても多くの選択肢があります。

転職は当たり前。副業を認める会社もあり、いくつも仕事を掛け持ちするダブルワーク、トリプルワークの人たちも出てきました。会社員という身分を持たずに、フリーランスで働く人たちも増えています。起業を選択する人も少なくありません。

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なんだかうらやましいように思いますよね。でも、他人がやっていることに目がいくほど、自分の現在地を見失いがちです。

さまざまなモデルケースを参考にできるのは、情報社会のいいところですが、目移りばかりしてしまう反作用があることも否めません。あれもいいな、これもいいなと、他人の人生のいいところばかり目について、肝心の自分の人生に迷いが生じてしまうのです。

それに対して、"昭和のサラリーマン"が働き方に悩んだ、という話はあまり聞かない気がします。

高度経済成長期には「サラリーマンは気楽な稼業」と歌われ、バブルの頃には「24時間戦えますか?」とあおられながらも懸命に働いていました。「一億総中流時代」なんて言われたこともあります。

その理由は、選択肢が少なかったからです。いや、本当はたくさんあったのでしょう。しかしまわりの人たちも同じように働いていたため、疑問を持つこともなく一生懸命になれたのです。そして、がんばった分だけ、より良い人生が待っていると信じられました。日本の経済は右肩上がりで、賃金テーブルのとおりに給料が上がり、実際に生活がよくなっていった人が多かったのです。

「多様性」を突きつけられる定年世代

人と同じであることが、幸せの基準であったような時代です。上司や先輩、あるいは親の生き方が見本でした。そういう意味では現在地も目的地もわかりやすく、人生の解像度は高かったのではないかと思います。「ジャムの法則」でいえば、ジャムは6種類しか置いていないし、その中の大人気商品を買っておけば間違いなかったのです。

当時の会社員はモーレツに忙しかったでしょうが、懸命に働けばその先の幸せが見えていますから、心理的成功も得やすかったはずです。それに比べると、現代は心理的成功を得るのが難しくなりました。とりわけ、昭和から令和を股にかけて生きてきた「昭和世代」の戸惑いは大きいようです。

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