"異色"オーディション「ノノガ」に感じる新しい波 プロデューサー「ちゃんみな」の姿勢に共感続出
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 12時30分
だが一方で、女性アイドルのありかたは、一定の価値観に縛られてもきた。たとえば、「アイドル=かわいい」という考えかたはそうだろう。
アイドルとは未完成で未熟な存在で、だからこそ成長するため一生懸命努力する。その姿は確かに魅力的だ。だがそこには保護者的な上から目線が入り込んでいる。アイドルは守られるべきか弱い存在であり、だから「かわいい」。
『No No Girls』には、そんな価値観によって「No」を突きつけられた候補者もいる。その候補者は、他のオーディションを受けてみて、自分の声質を考えたとき「かわいらしいアイドルにはなれない」と悟った。だが歌とダンスで自分を表現したいという思いはどうしても消えない。だからこのオーディションを受けた。
1990年代、平成以降になると、オーディションは候補者同士の競争という側面が強くなった。だがそこでもまだ、年齢などの応募条件がついていることがほとんどだ。『No No Girls』では、その条件さえも取り払って、どんな属性の人かにかかわりなく、ただ自分という存在を表現し、証明することだけを求められる。
つまり、いまオーディションは、単なる競争ではなく、本当の自分らしくありたいという人たちが「ここ」だと言える居場所を見つけるためのものになりつつある。
近年のオーディションが再チャレンジの場になりつつあるのも、そのひとつの表れだろう。『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』などでもその傾向はあったが、それは『No No Girls』も同じ。奇しくも『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』挑戦組からも3人が参加している。
「音楽が好き」で結ばれた仲間として
とにかく、ここまで選ぶ側と選ばれる側とのあいだに上下関係、分け隔てが感じられないオーディションも珍しい。それは、ちゃんみなと候補者たちが、「音楽が好き」という一点で結ばれる仲間でもあるからだ。
オーディションの審査中、「何かを好きって言えることって、現代では宝のようなこと」とちゃんみなが語り出した場面があった。「何が好きかわからない人っていま山ほどいる」。だから、そのなかで「音楽が好きと純粋に言える」ことの素晴らしさを表現に込めてほしい、と。
3次審査の結果を発表した回でも、ちゃんみなは、30人それぞれに合否を伝えるだけでなく、候補者全員の正直な思いを聞き、一人ひとりに真情あふれるメッセージを送っていた。
こういう場面をここまでじっくり時間をかけて見せてくれるオーディションもほとんど記憶にない。デビューするまで19回オーディションを受け、18回落ちたというちゃんみなだからこそできることなのだろう。
そんなちゃんみなが、最終的にどのようなガールズグループをつくるのか? これまで見たことのないようなガールズグループが果たして誕生するのか? 期待しつつ見届けたい。
【画像】自然体で審査にあたるSKY-HIとちゃんみなの様子も話題に『No No Girls』のオーディションの様子(5枚)
太田 省一:社会学者、文筆家
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