NHKオフィスで演奏する音楽番組を強烈に推す訳 藤井風、稲葉浩志、くるりなどの魅力を再発見
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 12時0分
今年の3月16日、先立って藤井風の出演する『tiny desk concerts JAPAN』の先行版が放送された。予想されたことではあったが圧巻だった。
歌にキーボードに、藤井風のフィジカルエリートぶりを見せ付けられ、「Yahoo!ニュース エキスパート」というメディアに私はこう書いた。
――変幻自在のボーカルやバックの優秀な演奏にも目を見張りましたが、個人的には、藤井風がキーボードを操る姿が目にこびり付いて離れません。何というか、鍵盤が両手にまとわり付いている感じがするのです。幼い頃から鍵盤が好きで好きで、弾いて弾いて弾きまくった人だけが出せる味だと思いました。
見せ付けられたのは藤井風の腕っぷし、声っぷし、つまり風っぷし――。
そして『tiny desk concerts JAPAN』は、この秋、レギュラー化され、初回(9月30日)はB'zの稲葉浩志、10月7日はKIRINJI、10月14日が君島大空合奏形態、そして10月28日にくるりと、何とも個性的なラインナップが出演し続けている。
個人的には、稲葉浩志の回が特に強く印象に残った。白状すれば、私はB'zの熱心なリスナーではなかったため、『ultra soul』(2001年)のような、ハードでギンギンなサウンドの中でシャウトする人というイメージが強かった。
しかし、というか、だからこそ、NHKの窮屈なオフィス、こぢんまりとした編成の中で歌われる稲葉浩志のボーカルにシビれたのだ。
我々の多くが聴き馴染んだ「ハードギンギン稲葉浩志」よりも、多くが初めて聴くこととなる「オフィスこぢんまり稲葉浩志」のほうに、彼の底力がくっきり表れた気がしたのである。
そして、10月28日オンエアのくるり回。弦楽四重奏の加わった『ブレーメン』『奇跡』『ばらの花』に、不覚にも涙しそうになった。
そもそも私は、仕事柄、テレビの音楽番組は、今でもよく見ているつもりだ。しかしそんな中、『tiny desk concerts JAPAN』だけに強く惹かれるのはなぜだろう。
拡大する音楽市場を牽引する「ライブ」
博報堂DYグループコンテンツビジネスラボによる新刊『令和ヒットの方程式』(祥伝社新書)によれば、日本の音楽市場は拡大しており、2025年には9000億円規模に届きそうな勢いである。
問題はその内訳である。その中で半分以上の比率を占め、かつ21世紀に入って急拡大しているのが「コンサート」なのである。つまり音楽市場の大票田は、パッケージでもサブスクリプションでもなく、ライブなのだ。
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