キリンの「クラフトビール」が苦戦、10年目の大反省 大量の広告投資から転換、事業部立ち上げ再起
東洋経済オンライン / 2024年11月2日 7時40分
「正直、スプリングバレーは決してよくない。目標を下回って推移している」。キリンビールのクラフトビール事業部長・大谷哲司氏は苦い顔でこう語る。
【図で見る】キリンと提携会社が展開するクラフトビールの代表商品
キリンは2023年、クラフトビールの主力ブランド「スプリングバレー」の販売数量を前年比70%増以上にするという高い目標をぶち上げた。だが、結果は同0.1%増の170万ケースと、理想からほど遠い結果に終わった。
今年もさらに深刻な状況が続く。数量目標(缶商品のみ)は前年比21%増の190万ケースと控えめに設定したものの、1月から9月の累計では前年同期比で31%も減少しているのだ。
新たにクラフトビール事業部を立ち上げ
決して力を抜いているわけではない。2023年にはスプリングバレーの新フレーバーを目玉商品として打ち出した。俳優の山田孝之や広瀬アリスを起用し、大きな広告投資も展開。さらに今年3月には、ブランド全体で味やパッケージをリニューアルし、数量の成長を狙ってきた。
数々の取り組みが空振りに終わった理由は「効率よく大量生産し、大量のCMを投下して飲んでもらう(『一番搾り』のような)商品のマーケティング手法を踏襲してきてしまった」(大谷氏)からだった。多くの消費者にとって「名前は知っているけど買わない」ブランドになっていたのだ。
この反省から、今年10月、キリンはクラフトビール事業部を立ち上げた。従来はキリンビールの中のマーケティング部や営業部がクラフトビール関連の業務も行っていたが、一連の業務を1つの部署に集約する。
テレビCMからWeb広告へシフトし、タレントの起用方法も見直すなど方針を変更する。事業部の設置と同時に、キリンが2014年に資本業務提携しているクラフトビール大手・ヤッホーブルーイングから初めて出向者を2名受け入れた。同社と連携し、売り場づくりやイベント開催を実行する考えだ。
また、広告投資によってスプリングバレーのブランドの認知は獲得できていたものの、実際に飲食店やイベントでクラフトビールを体験し、それを缶の売り上げにつなげるサイクルがうまく回っていなかった。
そこで、クラフトビール専用の業務用サーバーの導入に力を入れる。どのビールとどんな料理がマッチするかといったメニュー提案とともに、居酒屋やバルなどへの営業を進める。業務用と家庭用のつながりを意識してブランドの強化に努める。
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