何でも「カスハラ扱い」する店が失う重要な情報 正当なクレームを取りこぼさないための方法
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 11時0分
ニトリ、しまむらをはじめとして小売りサービス業界でのカスタマ―ハラスメント(以下、カスハラ)対策が続々と発表され、カスハラ客に対しては毅然とした対応をすべき、という接客方針は徐々に広がってきています。
2024年10月には東京都の「カスハラ防止条例」が成立し、2025年には施行されます。このように、世の中はカスハラとの対決姿勢を強めていくものと見られます。
しかし、企業・組織が立ち止まって考えるべきことがあります。それは、正当なクレームまで「カスハラである」と判断されてしまうかもしれないという問題です。
『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』の著者である津田卓也氏が、区別するのが難しいクレームの見極め方をご紹介します。
カスハラは発生クレーム全体でみると2~3割だが…
私が研修先できくところでは、多くの企業で従業員のクレーム対応時間の約8割はカスハラ客への対応のために割かれています。その分、正当なクレームに割くべき時間がとられてしまっているのです。
正当なクレームは、企業の提供する商品やサービスに問題があった場合や従業員側の接客に至らない点があったときにそれらを改善するための重要な情報となります。これは企業と顧客との重要な接点となり、クレームに真摯に対応したことで企業のイメージアップにもつながることもあり得ます。
しかし現在、この正当なクレームはカスハラ対策の報道が盛り上がる中で、陰にかくれて重要視されなくなってしまっているのではないでしょうか。
研修先での調査では、クレーム発生件数のうち7割以上が正当なクレームであることがわかりました。残り2~3割のカスハラ案件に対応時間の約8割がとられている現状は、企業・組織にとっての有益な情報をみすみす取りこぼしているともいえるのです。
また、発生クレーム全体の7割以上を占める正当なクレームを「きつい言い方をされたのでカスハラである」と断定してしまう危険性もあります。
このような課題を見据えて、企業・組織がカスハラに適切に対処するにはどのような点に注意すればいいのでしょうか?
まずは「顧客」と「非顧客」の定義づけをすることで、正当なクレームを取りこぼさないようにする方法を見ていきましょう。
そのお客様は「顧客」か「非顧客」か
顧客とは、「その組織が求めるお客様としての、正しい行動をしてくださる方」のことです。「提供している商品やサービスを適正に利用してくれる人」と定義していいでしょう。
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