女性よりも男性を出世させがちな「石器時代の脳」 男性偏重の背後にある進化のミスマッチの問題
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 11時0分
人間が歴史を記録しはじめて以来、その記録から女性は締め出されてきた。
ケンブリッジ大学教授のメアリー・ビアードは著書『舌を抜かれる女たち』で、太古から現代までの性差別の無数の例を紹介している。
古代の世界では、女性が権力を手にしなかったというだけではなく、女性に権力を与えるという考え方そのものが馬鹿げた概念と見なされることが多かった。
ビアードが説明しているように、紀元前4世紀には、「アリストファネスが喜劇をまるごと1つ費やして、女性が政権を奪取するという『滑稽(こっけい)極まりない』夢想を描いている。その滑稽さの1つは、女性が公衆の前で適切に話せないことだった」。
ビアードが際立たせているが、女性が権力の座に祭り上げられたときには、3つのことの1つが起きがちだった。
第1に、そうした女性は男性的だと評される。つまり、できるかぎり男性を真似したときにだけ、権力の獲得を目指すことができるというわけだ。
第2に、そうした女性がしゃべると、動物が「吠えている」とか「キャンキャン言っている」というふうに描かれる。人間の言語による発話という男性の才能を発揮することが、身体的に不可能というわけだ。
そして第3に、彼女らは狡猾(こうかつ)で他者を巧みに操る、権力の強奪者とされる。そして、どうにかして権力の座にたどり着くと、その権力を濫用するという。
2000年ばかり時間を早送りしても、こうした性差別的な言葉は、相変わらず残っている。それがあまりにひどかったので、1915年にはフェミニストの著述家シャーロット・パーキンズ・ギルマンは、『フェミニジア』という小説を書かずにはいられなかった。
この小説の舞台は空想の世界で、そこでは女性たちはもっぱら女の子を産む。男性は存在しない。女性が統治している。ギルマンが想像したユートピアには、戦争も、他者の威圧もない。
女性のほうが指導者にふさわしい?
言っておくが、『フェミニジア』は若干極端に見えるけれど、より多くの女性を指導者の地位に昇進させるのは、公正であるばかりでなく、賢くもあることを、山のような証拠が示している。
ジェンダー本質主義者になるのを避けることは重要だ(ジェンダー本質主義は、男性と女性は根本的かつ相容れないかたちで得意なことと不得意なことがあるとする。女性に対する抑圧を維持するために、何世紀にもわたって使われてきた見方だ)。
だが、平均すると女性のほうが男性よりも独裁的になりづらく、民主的な方法での支配に熱心であることが、多くの研究によって実証されている。
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