女性よりも男性を出世させがちな「石器時代の脳」 男性偏重の背後にある進化のミスマッチの問題
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 11時0分
また、想像しうるかぎりのリーダーシップの指標のほぼすべてで、女性は男性と同等以上の成績を収めるというのも本当だ。
ここには皮肉にも、他の要因が絡んでいるかもしれない。それは、現代の男性優位の社会で、女性がトップレベルの役割に行き着く難しさだ。
女性は頂点に上り詰めるまでに男性よりも多くの壁にぶつかるので、出世した女性は、間違ってトップまで来てしまったような凡庸な男性よりも優秀かもしれない。
頂点にたどり着く難しさに見られるこの違いが、データの偏りを生むことがありうる。少数の優秀な女性と、平凡な人が少なくとも一部を占める男性とを比較しているからだ。
要するに、権力を振るうことに関して、男性である利点がないことは明らかだ。それなのに、社会はそのような利点がたしかに存在しているかのように振る舞う。
政治指導者に関して、性別による違いがどれほど奇妙か、少し考えてほしい。
ウラジーミル・プーチンは、まるで時計で計ったかのように定期的に、上半身裸で乗馬しているところや、柔道の稽古をしているところや、その他のかたちで戦士のように力を誇示しているところの写真を公表する。
このようなシグナルが効果を発揮しうるのは、私たちの石器時代の脳が、リーダーシップの資質を身体的な大きさと結びつけて捉えている面が依然としてあるからだ。
だが、これは馬鹿げている。あなたが外科手術を受けるところを想像してみよう。担当の外科医が、頼んでもいないのに腕立て伏せを20回やり、自分の優れた身体能力を示したとする。あなたは別の外科医を見つけるとともに、おそらく、最初の外科医に医師免許を授与した機関に通報するだろう。
だが、政治指導者となると、現代社会は男性的な強さの誇示に報いることが多い。
進化のミスマッチのせいで、そのようなシグナルは今やまったく意味がない。なにしろ、たいていの人が覚えているように、アンゲラ・メルケルとジャシンダ・アーダーンは、現代屈指の有能な政治家だったのだから。この2人がベンチプレスでどれだけ持ち上げられるかなど、誰であれ、気にするべきだろうか?
進化心理学の説はみな論争の的になるので無理もないが、リーダーシップにおける性差別が石器時代の脳と結びついていることを、仮にあなたが疑っているにしても、文化的な女性差別の範囲の外にまで及ぶ、さまざまな研究結果を無視するのは、さらに難しい。
男性らしい顔に対する偏向した気持ち
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