「世界の鉄道をAIで変革する」日立の野望と現実 保守作業が劇的改善するが導入費用がネック?
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 6時30分
国際鉄道見本市「イノトランス」が今年もドイツのベルリンで9月24〜27日に開催された。世界中の鉄道関係者が注目するイベントであり、このタイミングを狙って世界各国の鉄道関連メーカーが新製品や新技術の発表を行う。
【写真】イノトランスの会場で固く握手を交わすエヌビディアでデーターセンタービジネス担当バイスプレジデントを務めるヨゲシュ・アグラワル氏と日立レールグループのジュゼッペ・マリノCEO
日本国内トップ、さらに世界でも中国中車、アルストム、シーメンスと並び大手の一角を占める日立製作所は、営業最高速度時速350kmを誇る国際高速列車ETR1000の実物を会場に持ち込んだ。イタリアの鉄道運営会社トレニタリア向けに30編成導入することが決まっており、そのお披露目である。
エヌビディアと連携しAI活用
そして、開催初日の24日、日立はもう1つの発表を行った。アメリカの半導体大手メーカー・エヌビディアと鉄道の運用や保守事業で連携するというものだ。鉄道業界全体に関係するという点で高速列車よりもインパクトは大きい。
製造現場における生産整備などの保守作業においては、状態をつねに監視し、劣化状況に応じてメンテナンスを行うCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)の導入が進んでいる。これは定期的にメンテナンスを行うTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)に対比する考え方である。
CBMでは各種センサーによる常時監視とコンピューターによるデータ解析により、故障の予兆を検知して事前に修理や部品の交換を行う。そのため故障を未然に防ぐことができるだけでなく、不必要な修理や部品交換がなくなる点でコスト削減にもつながる。
CBMの考え方自体は1970年代から存在していたが、センサーやコンピューターなどの導入費用が高額であることや、データ通信速度が遅い、解析技術が不十分といった理由からなかなか普及しなかった。しかし、近年はデジタル技術やIoT技術の急速な発達により導入費用が安価になり、さらに高い学習技術や解析機能を持つ人工知能(AI)が登場し普及への環境が整いつつある。
鉄道業界では、例えば東海道・山陽新幹線のドクターイエローに代表される検査車両が架線や線路の状態をチェックしている。しかし、ドクターイエローの走行は約10日に1日であり、在来線の検査車両となるとその頻度はさらに下がる。そこで、鉄道各社の間では営業車両にセンサーを搭載して、営業運行しながらインフラを点検するという動きが進む。これなら検査頻度を増やすことができる。JR東日本は山手線E235系の車両を使って線路や車両のCBMを行っている。
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