「世界の鉄道をAIで変革する」日立の野望と現実 保守作業が劇的改善するが導入費用がネック?
東洋経済オンライン / 2024年11月5日 6時30分
これまでは1日どころか、メンテナンス拠点でデータが処理されるまでに最大10日間かかることもあったという。「しかし、リアルタイム解析によって重大な故障の予兆を発見できれば、次の列車が来る前に列車を停めることができる。事故を未然に防ぐことができるわけです」。
エヌビディアとの協業によるエイチマックスは「今は架線の映像解析だけだが、将来は線路、車両、駅にも展開したい」と我妻氏は意気込む。エヌビディアのホームページでは、従来のデジタル保守サービス導入前と比較したエヌビディアとの協業によるエイチマックスの効果について、「旅客運用や保守運用などの車両運用にかかわる遅れを最大20%削減、車両のメンテナンスコストを最大15%削減、オーバーホールにおいて交換する部品の30%削減、車両基地における無駄なアイドリングをやめることでアイドリングによる燃料消費を最大40%削減」といった点を挙げている。
エヌビディアが鉄道に着目した理由
では、エヌビディアはなぜ鉄道分野で協業したのだろうか。自動車は鉄道よりも業界規模がはるかに大きいし、航空業界は非常に精密な保守作業が行われている。この点について、エヌビディアでデータセンタービジネス担当バイスプレジデントを務めるヨゲシュ・アグラワル氏は、「鉄道を車両単体でなくインフラも含めたシステムと考えると、自動車や航空よりもはるかに複雑であり、その維持には困難がつきまとう。そこでわれわれの出番があると考えた」と話す。
その点において、エヌビディアが協業するのは日立だけではない。シーメンスやドイツ鉄道とも協業して車両・インフラの保守、エネルギー消費量の削減など運行効率の最適化に取り組んでいる。鉄道分野はビジネスチャンスの大きい市場だと考えているのだ。
日立レールグループのジュゼッペ・マリノCEOは「今後5年で、エイチマックスによる収入を日立レールの収入の全体の1割になるようにしていきたい」と話す。たとえば、2024年度における日立の鉄道事業の売上高は1兆円超えが予想されている。この数字を当てはめれば、5年後にエイチマックスがもたらす収入は1000億円ということになる。なかなかアグレッシブな目標である。
9月27日には、日立はコペンハーゲン市内の地下鉄を運営するコペンハーゲンメトロに対してエヌビディアの技術を活用したエイチマックスを提供する契約を締結したと発表した。日立はコペンハーゲンの地下鉄ネットワークの設計、製造、構築を請け負っており、同社の技術により無人運転システムが実現している。そこへエイチマックスも加わった。2025年末までに導入する計画だ。
この記事に関連するニュース
-
列車の「ガタンゴトン」の音がなくなったのはなぜ?―中国メディア
Record China / 2024年11月19日 5時30分
-
「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路を走る「電車のようなバス」
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 6時30分
-
大雄山線が無線式列車制御システムCBTC導入へ 年間1千万円の削減期待
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年11月12日 19時10分
-
故障で全面運休も、欧州「水素列車」の前途多難 期待高いが時期尚早?メーカーもトーンダウン
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 6時30分
-
米大統領選、トランプとハリス「鉄道政策」の争点 バイデンが進める鉄道復権の動きは継続するか
東洋経済オンライン / 2024年10月24日 6時30分
ランキング
-
1「無人餃子」閉店ラッシュの中、なぜスーパーの冷凍餃子は“復権”できたのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月20日 6時15分
-
2ブランド物を欲しがる人と推し活する人の共通点 囚われの身になってしまう、偶像崇拝者たち
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 14時30分
-
3食用コオロギ会社、破産へ 徳島、消費者の忌避感強く
共同通信 / 2024年11月22日 1時18分
-
4「サトウの切り餅」値上げ 来年3月に約11~12%
共同通信 / 2024年11月21日 19時47分
-
5さすがに価格が安すぎた? 『ニトリ』外食事業をわずか3年8カ月で撤退の原因を担当者に直撃「さまざまな取り組みを実施しましたが…」
集英社オンライン / 2024年11月21日 16時49分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください