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なぜ「ダイソー釣り具」に私たちは魅了されるのか 「100均ビジネスの救世主」になりうる商品の顔ぶれ

東洋経済オンライン / 2024年11月5日 9時30分

筆者も子どもの頃にかわいいメモ帳やシールを集めたりしたものだが、それらを全部詰め込んでつくる、まさに乙女&乙メンのファンタジー帳だ。
こちらも、コロナの少し前からブームになっていたらしい。とりわけクラシックなセピア調が人気で、セリアで見かけたペーパーは、ジャンクジャーナルのコラージュ素材として重宝されていると知った。

同じくかわいらしい紙モノを駆使して作る「おすそ分けファイル」も人気だ。で、最近100均にずいぶんファンシーなマスキングテープや折り紙が増えたなと感じていたが、背景にはこうした需要があったのか。

YouTubeの作り方動画を見ていると、製作にはたいがい100均の紙モノが多用され、素材紹介もされている。ジャーナルやファイルの1ページを作るのには、土台になる紙、それに貼りつける折り紙やデザインペーパー、紙を貼るための両面テープやマスキングテープ、ポケットを作るために別の折り紙、出来上がったポケットを飾るシールやリボンなど、実に多数の素材が必要になる。それを何ページも作るのだ。100均の売り場に行って、必要だと思われるものを選んでいくうちに、1000円などあっという間に突破するだろう。

「推し活手帳」づくりに活用する客も多い。推しの写真をページのメインに配置して周囲にキラキラしたシールをちりばめて、自分だけの世界を作り上げることができる。これもまた、100均の材料を消費する。

こういうものは、一つ作るとまた次を作りたくなるもの。また違う紙モノを買ってきて、その世界観にあう素材を集めて――以下、繰り返しの消費沼が口を開けるのだ。紙モノは、見た目はファンシーだが、いくらでもお金を吸い込んでしまうモンスターの棲家に違いない。

100円でも勝負できるアイテムはある

釣りの仕掛けも、手帳のコラージュに使うペーパー類も、製造コストが莫大にかかるとは思えない。原価はそこそこ、100円でも売ることができ、かつ使い切りで繰り返し買ってもらえるアイテム。これほどありがたい商品はないだろう。

そして、両方とも生活必需品ではなく、ささやかな楽しみを求めて買うものだ。だから、購入する際もうきうきする。どんな大きな魚が釣れるか、どんな可愛いページが作れるか。それが一つ100円なら、つい多めに買ってしまっても良心は痛まない。

100均を取り巻くコスト環境は今後も厳しくなるだろう。そんな中でも、常に新しい鉱脈を探してくるのが、この業界だ。100円で売ったとしても、繰り返し買ってもらえるアイテムが増えていけば、十分戦力になる。世のブームを敏感にかぎ取り、そこに商品をどんどん投入していくのが、100円ショップの底力だ。次は何をしかけてくるのか、楽しみに待ちたい。

松崎 のり子:消費経済ジャーナリスト

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