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「シグナル」闇バイトに悪用されるアプリの正体 徹底したプライバシー保護姿勢が生まれた背景

東洋経済オンライン / 2024年11月6日 9時0分

このように個人のデータが商業的に利用されたり、政府から不当に監視されたりすることがないよう、シグナルは徹底したプライバシー保護の体制を敷いていると見ることができる。それは強固な信念、あるいはイデオロギー(政治信条)の域に達しており、その分だけ融通が利かない。

今回の闇バイト強盗事件など犯罪にシグナルが使われた場合には、「シグナル財団は利用者のメタデータなどを警察に提供すべきだ」と考える人も少なくないと見られるが、おそらくそうした臨機応変で柔軟な対応は彼らにとって信条的、そもそも原理的に極めて難しいはずだ。
 
とはいえ、2021年1月6日に起きたアメリカの連邦議会襲撃事件で、FBI(連邦捜査局)はシグナルでやりとりされたメッセージを証拠に極右の民兵組織「Oath Keepers」に所属する一部容疑者を逮捕したと報じられている。

本来データは残されていないはずなのに、どのようにして証拠となるメッセージをFBIが入手したのかはいまだに謎とされる。この事例を見る限り、シグナルを使った指示役などの犯人を警察などの捜査機関が割り出すのは絶対に不可能とまでは言えないようだ。

小林 雅一:KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授

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