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東京で一獲千金狙うも「酷評」店主の痛切な気づき 山形の超人気ラーメン店「新旬屋」はどう再生したか

東洋経済オンライン / 2024年11月7日 8時35分

またとないチャンス。当時から日本一のラーメンイベントとも言われていた「東京ラーメンショー」に一獲千金の気持ちでチャレンジしてみることにする。

山形のご当地ラーメンで、蕎麦屋で人気の「鶏中華」をアレンジしたラーメンを作って「東京ラーメンショー2012」に乗り込んだ。とんでもない来客数で、「新旬屋 麺」にも長い行列ができ、初めて出たラーメンイベントでなんと1500杯のラーメンを提供した。

「これほどまでに売れるとは思わず、大満足で帰りましたが、今思えば自分はなんというラーメンを出していたんだろうと怖くなるぐらいです。ネットを見てみると書き込みがひどかったですね。

『まずい』『山形だったらもっと旨い蕎麦屋さんの鶏中華があるだろう』『なんていうラーメンを出してるんだ』と大多数がクレームで、確かに売り上げは上がりましたが満足感がゼロ、逆に言えば悲壮感のほうが大きくてこれはマズいと落ち込みましたね」(半田さん)

結果、自分は人の真似しかしておらず、自分のラーメンが作れていないことに気づいたのである。売り上げも落ちている中、半田さんはラーメン作りを1から考え直し、オリジナリティのある自分だけのラーメンを作ることにチャレンジした。

こうして完成したのが「金の鶏中華」である。

旧来の蕎麦屋の鶏中華ではなく、ラーメン屋の作り方で鶏中華を作ったらどうなるんだろうというトライアルである。蕎麦ダレは使わず、鶏のスープに醤油と塩のカエシを加えたラーメンらしい鶏中華を仕上げた。この「金の鶏中華」を2013年から提供し始める。

「蕎麦屋の鶏中華とも違う、とりもつラーメンとも違う、何だこれは」という批判がたくさん来たが、半田さんは何か新しいことをすれば批判は必ず出てくることを受け入れ、せっかく自分で作り上げた一杯をもっと美味しくしようと努力した。

そこで閃いたのが、注文が入ってからスープに生の鶏肉を入れて一杯ずつ小鍋で作るという製法だ。通常のチャーシューを注文を受けてから作ることは不可能だが、鶏肉なら直前に火入れすることでフレッシュな味を出せる。スープとともにカエシも一緒に入れて鶏肉を煮込むことで、カエシの味も鶏に入るし、鶏肉の旨味も一気にスープに広がる。これは一石二鳥だ。こうして「金の鶏中華」はだんだん進化を遂げていく。

名古屋のラーメンイベントで「金の鶏中華」を提供したとき、一杯ずつ小鍋で作っていたらお客さんを待たせてしまい、やむなく事前に火入れして味付けした鶏肉を使うことになった。売り上げは上がったが決して満足感は得られず、自分の作りたいラーメンの方向性を改めて知ることになった。

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