トヨタとNTT、5000億円規模「AI安全基盤」の中身 事故を未然に防ぐ業界共通のプラットフォーム
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 10時0分
NTTとトヨタ自動車は、5000億円規模のモビリティAI基盤構想を共同発表した。両社は2023年10月から基盤開発に着手し、2028年にはパートナー企業との社会実装を開始、2030年以降の本格普及を目指す。
【写真で見る】AI基盤を用いて交通事故防止や高度な自動運転を実現する
「交通事故ゼロ社会」を掲げるこの構想は、従来の自動運転技術の延長線上にはない。通信とAIを組み合わせた新たなアプローチで、モビリティ産業の変革を目指す。なぜ今、この巨額投資なのか。10月31日に実施された両社の記者会見から、その狙いと影響を探る。
三位一体で実現する新たな交通安全策
両社が描く未来図の核心は、「車」「インフラ」「人」の三位一体による新しいモビリティ社会の実現だ。現在の自動運転技術は車両単体での認識・判断に依存している。NTTとトヨタは通信とAIを組み合わせ、より包括的な安全性の確保に挑む。
交差点での出会い頭事故は、現在の自動運転技術では対応が難しい。インフラからの情報活用で死角をカバーし、事故を未然に防ぐ。高速道路での合流時はAIが他車両の動きを予測し、スムーズな合流をサポートする。気象条件や路面状況といった情報をリアルタイムで共有し、安全な運転を実現する。
背景には、両社が持つ次世代技術の成熟がある。
トヨタは2025年から新しいソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」の導入を始める。Areneは車載ソフトウェアを統合的に管理し、無線でのアップデートや新機能の追加を可能にする基盤だ。自動車のソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)への転換を支える重要な技術となる。
一方のNTTは、次世代通信インフラ「IOWN」(アイオン)の開発を進めている。IOWNは光技術を活用し、大容量データを低消費電力で高速処理する。具体的には、光をベースとした高速ネットワーク、デジタル空間でのシミュレーション技術、ICTリソースの最適化基盤という3つの技術で構成される。従来の100分の1の消費電力で、大量のデータをリアルタイムに処理できるという。
両社の技術は補完関係にある。SDV化で増大する車両データの処理に、IOWNの大容量・低遅延通信が不可欠となるためだ。
3つの基盤が支える未来のモビリティ
では、具体的に両社は何を作ろうとしているのか。その答えは「3つの基盤」にある。
第1の基盤は、分散型計算資源データセンターだ。トヨタの試算では、2030年にはSDVの普及により、通信量は現在の22倍、計算量は150倍に達する。この膨大な処理需要に応えるため、NTTのIOWN技術をベースとした光技術による低消費電力データセンターを全国各地に分散配置し、車両から送られる大量のデータをリアルタイムで処理する。
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