にわかに脚光、国民民主「103万円の壁」の核心は? 「178万円で働き控え解消」という罪作りなアピール
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 7時30分
2024年10月27日に実施された衆議院議員選挙では自民・公明与党が過半数割れとなった一方で、28議席ながらにわかに政権運営を左右する存在に浮上したのが国民民主党だ。石破茂政権は同党の協力を得るべく政策協議に入った。
政策協議の中でカギを握るのが、所得税の「課税最低ライン(給与収入の場合103万円)の引き上げ」だ。
国民民主党の玉木雄一郎代表は選挙期間中、目玉公約として「手取りを増やす」と先々で訴え続けた。インフレによって所得税の負担が増していることを問題視したゆえの公約だった。したがって、自公政権に協力するには、この公約の実現を必須条件と位置づけている。
ただし、103万円を「最低賃金の増加率1.73倍を当てはめ178万円まで引き上げる」という具体策をめぐっては、税収減が7.6兆円(政府試算)と大きいことや、高所得者ほど減税幅が大きい逆累進であることなどに対して批判が上がっている。
何より、国民民主党が「103万円の壁」というフレーズを使い、パート主婦らの「働き控え」対策の側面を打ち出したことが議論の的となった。
「インフレで税負担増」はもっとも
ここでまず押さえておきたいのは、所得税の課税最低ラインとは、収入から差し引かれる基礎控除と給与所得控除の合計額であり、パート主婦に限らず収入のある人に関係することだ。
なおかつ、「インフレによる負担増」という問題意識そのものはもっともな面がある。
「インフレを受けた所得税制の調整は確かに必要だ。だがその方法はよく考えなければならない」。税制や社会保障制度に詳しい大和総研の是枝俊悟主任研究員はこう指摘する。
なぜ所得税制のインフレ調整が必要なのか。所得税は負担できる人がより負担するという累進構造のもと、収入の伸び以上に税負担が増すためだ。
税率が一律の消費税や法人税と異なり、所得税は収入から課税所得を算出する際に控除される額や税率が金額ごと定められている。この2~3年で物価と賃金が上昇する中、物価と同じペースで賃金が上がったとしても、税負担が増すことで実質可処分所得の目減りが起きる。自然増税となるのだ。
かつては物価上昇に合わせて所得税の課税最低ラインが引き上げられてきたが、1995年以降、物価が上がらない中で103万円に据え置かれてきた。
しかし、物価上昇に応じて調整するなら、物価上昇率を用いたほうが自然に思える。国民民主党の主張は、「1995年からの最低賃金の伸び率1.73倍に合わせて課税最低ラインを178万円まで引き上げる」というものだ。物価上昇は1.1倍だ。
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