にわかに脚光、国民民主「103万円の壁」の核心は? 「178万円で働き控え解消」という罪作りなアピール
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 7時30分
なぜ国民民主党は最低賃金を基準に用いるのか。ここで意味を持ってくるのが、国民民主党が用いる「103万円の壁」という表現だ。
「働き控え」解消のために大幅減税?
これまで、パート主婦や学生アルバイトが、課税されるがゆえに103万円の手前で「働き控え」ることが起きており、これが人手不足を招いていると言われてきた。そのため、「働き控えをなくす」という別の政策目的をミックスしているのだ。
最低賃金に連動するパート・アルバイト時給の上昇に合わせ、1995年当時と同じ時間働いても税負担が生じないよう調整するというわけだ。
ただし、働き控えに対する効果、それに「103万円の壁」のフレーズを用いることについては疑問符がつく。
「年収の壁」という言葉は、パート主婦がより多く働くと手取りが減るため、手前で働き控えを行う意味で用いられてきた。「年収の壁」にはいくつか金額があるが、103万円は手取りが減る「壁」ではなくなっているからだ。
現在の制度で「年収の壁」といえるのは、社会保険制度にまつわるものだ。国民年金の3号被保険者として保険料が免除されていたパート主婦に106万円、130万円で保険料負担が生じ、手取り減となる段階がある。
政府はこれまでさまざまな対策を講じてきた。厚生年金の保険料を払えば将来の年金額が増えるという「手取り」では測れないメリットもある。
一方、税にまつわる金額のうち、課税最低ラインである103万円は超えても手取りが減るわけではない。所得税は103万円を超えたぶんにかかるからだ。
以前は世帯での手取り減を招いていた配偶者控除も、段階的に減ることで手取り減を招かないよう変更されている(学生アルバイトの場合、103万円を超えると親は扶養控除がなくなり税負担が増す)。
とはいえ、現実には「103万円」でパート主婦の働き控えが確実に起きている。給与収入の分布でも、103万円手前にピークが生じている。
その理由としては、103万円を基準に家族手当を支給する企業が減ったとはいえいまだ存在することもあるが、税負担=手取り減という思い込みや、税負担を避けようとする心理面は大きい。
思い込みや心理面の「壁」に基づく働き控えへの対策として、国民民主党が掲げる、最低賃金に基づいた課税最低ラインの大幅引き上げは妥当なのか。税の「壁」の強調は、働き控えにつながる思い込みを強めかねない。
「最低賃金」が基準でいいのか
加えて、前出の是枝氏は「最低賃金を基準に課税最低ラインを引き上げることは、所得税制において『最低賃金で一定時間働くのなら課税しない』という新たな考え方を導入することになる」と指摘する。すなわち、税制の根幹に関わる問題が生じてくるというのだ。
この記事に関連するニュース
-
103万円の壁、目的は「壁解消」なのか、「減税」なのか【播摩卓士の経済コラム】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月16日 14時0分
-
「103万円の壁」撤廃は実現可能か? 国民民主党玉木雄一郎代表が疑問に答える
Japan In-depth / 2024年11月13日 0時32分
-
話題の「103万円→178万円 年収の壁」引上げ。そもそも178万円の根拠は何で、会社員にも恩恵はあるのか?
Finasee / 2024年11月11日 19時58分
-
石破政権「103万円の壁」撤廃も〝増税画策〟に警戒 手取り増と逆行、厚生年金106万円の壁撤廃へ 浮上〝財源論〟の裏に財務省の影
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月10日 10時0分
-
「働きたいのに働けない」”年収103万円の壁”引き上げへの期待と課題 さらに「106万円」「130万円」の壁も そもそもなぜ178万円?
RKB毎日放送 / 2024年11月5日 18時5分
ランキング
-
1形を変えた政活費に? 自民改革本部案の「外交支出」、与野党協議の焦点に
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年11月21日 21時44分
-
2生後2カ月の次男が意識不明 傷害容疑で巡査長を書類送検 福岡県警
毎日新聞 / 2024年11月21日 19時37分
-
3暗躍する悪質ホストの歌舞伎町スカウト「さらすぞ」 闇バイト募集と同じ手口 深層 歌舞伎町
産経ニュース / 2024年11月21日 21時6分
-
4稲村陣営がSNSが選挙期間中に凍結 刑事告訴の方針「選挙戦で自由な発信ができなくなった」 兵庫県知事選
MBSニュース / 2024年11月21日 19時25分
-
5中谷防衛相、年内訪韓=9年ぶり、韓国国防相と合意
時事通信 / 2024年11月21日 23時23分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください