失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖 危機感つのらす中韓勢、日本勢には好機か
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 7時40分
もちろん、この確率は計量的なものではなく、あくまでイメージとしてのものでしかない。ただ、EVが社会で広く普及していくためには、あらゆる使用状況に耐えられる高い安全性が求められることは間違いない。
電池メーカー、自動車メーカーともに過充電を防ぐシステムや衝撃を逃がす構造に工夫を凝らすなど安全性を向上させる取り組みは進めている。しかし、EV自体が普及し始めて日が浅く、メーカーが想定していない使われ方をするケースもある。また、電池の製造、特に大量生産における品質の安定性は常に課題となる。
電池トップメーカーの危機感
「安全性に関わる問題を解決しなければ、いずれ破滅的な結果を招きかねない」
9月1日に中国四川省で開かれた電池産業フォーラムの講演でCATLの曾毓群(ズン・ユーチュン)董事長はそう訴え、業界全体で安全対策の強化を呼びかけた。韓国・仁川でのマンション火災など市民に不安を与える事故が相次いだことを受けた発言と見られる。
中韓電池メーカーはここ数年、巨額の投資と積極的な国家支援と受注の獲得を背景に大きく市場シェアを伸ばしてきた。調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2023年の車載リチウムイオン電池の世界シェアで、1位CATL、2位BYD、3位韓国のLGエナジーソリューションと続く。中韓大手5社では世界シェアの8割弱を握っているが、社会からの信頼を失えば、その地位は一気に崩れかねないため危機感は強い。
ただでさえ、ヨーロッパやアメリカではEVの成長速度は鈍化している。車両価格の高止まりや充電時間の長さが敬遠されていると見られ、補助金の打ち切りや減額をきっかけに販売が急減する事例が頻発。ドイツのフォルクスワーゲンやアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)、スウェーデンのボルボなどEVに積極的だったメーカーも次々とEVの開発計画や移行時期の目標の見直しを打ち出している。
そのうえ、安全性への疑念が深まれば、EV失速に一層拍車をかけることになる。
「品質と安全性の高い製品に裏打ちされた日本勢にとってチャンスとなる」。日系の大手自動車メーカーや電池メーカー幹部からはこうした声が多く聞かれる。
日本の電池メーカーは安全性に自信を持つものの、コスト最優先の風潮の中でシェアを落としてきた。車載電池のグローバル市場でのシェアはパナソニックが6%にとどまるなど、日本勢を合計しても10%に届かない。改めて安全性がより重視されるようになれば、日本製電池が巻き返す余地が出てくる。
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