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どんなに働いても「なぜか生きづらい」その真因 現代人を生きづらくさせる「スモール・トラウマ」

東洋経済オンライン / 2024年11月8日 14時0分

女医であるアニタは、仕事のストレスや体調不良だけでなく、職場の官僚主義から生じるスモール・トラウマにも悩まされていました。これらのことは、天職やキャリアであったはずのものを、満足を得られない仕事に変えてしまいます。私は多くの専門職でそれを見てきました。学究の世界、ジャーナリズム、法曹界、工学の世界、その他ありとあらゆる専門職においてです。

魂を破壊するようなこの変容は、仕事由来のスモール・トラウマの急激な増加を招いています。従来、それは「やりたくない仕事」にしか見られなかったのですが……。現在、多くの仕事はベルトコンベヤー式にこなされています。弁護士はずっとメモをとりつづけ、教師は書類の山を片づけ、看護師はクビにならないために作業を次々にこなしています。その例は他にもいくらでもありますが、私が言いたいことはもうおわかりいただけたでしょう。

仕事に満足しているように見える人も……

では、幸運にも仕事に満足している人々についてはどうでしょうか? 彼らは楽々と人生を送っているのでしょうか? そうでもなさそうです。キャリアには、さらなる研修、昇進、ステイタスや社会的地位の向上、そして通常、より多くの報酬がつきものです。

その滑りやすい階段をのぼる過程では、スモール・トラウマに対する特別な反応が生じやすいのです。インポスター症候群(仕事で成功しているのに自分を過小評価してしまう心理状態)、終わりのない業績評価、 激しい競争、明確な序列といった嵐に休みなく襲われると、人は能力不足を感じ、いつかそれがばれるのではないかという不安に苛まれます。

自信に溢れ、仕事を完璧にこなし、まさに絶好調、という人をあなたは知っているかもしれません。けれども、彼らも自信のなさに苦しめられているはずです。自信満々に見えるのは、自分を偽っているのがばれるのを恐れているからなのです。これはあなたのことかもしれません。

実を言えば、私たちの多くはそう感じているのですが、怖くて口に出せないのです。そのことがしばしばスモール・トラウマになります。あなたがインポスター症候群でなくても、あなたが知っている誰かは、その症候群になっていて、「ばれる」のを恐れているはずです。

社会に由来するスモール・トラウマ

仕事に関する問題は、スモール・トラウマのより広範でよりマクロな源泉、すなわち現代社会へと私たちを導きます。現代社会には素晴らしい側面がたくさんあり、心身の健康状態という点でも、2、300年前の世界に戻りたいとは誰も思わないはずです。それでも現代社会にはスモール・トラウマの原因になる要素が溢れています。

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