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どんなに働いても「なぜか生きづらい」その真因 現代人を生きづらくさせる「スモール・トラウマ」

東洋経済オンライン / 2024年11月8日 14時0分

私たちはグローバル経済の中で暮らしていて、その経済は多くの人の生活水準を押し上げましたが、その反面、自分と比較する相手が数百万人どころか、数十億人になりました。圧倒されるように感じるでしょうし、それも当然です。

「~ができたら、きっと幸せになれる」──この考えが何度、あなたの頭に浮かんだことでしょう。もう少しお金があったら、昇進したら、完璧なパートナーを見つけたら、子どもができたら……願望は限りなく続きます。

これを私は「奮闘の輪」と名づけました。私たちは成果や目標を目指して仕事に励み、奮闘し、振り返る時間をほとんど取ろうとしません。しかし実際には、ハムスターのように奮闘の輪を回しているだけなのです。休息も終わりもなく、ひたすら消耗するだけです。「いつか」ではなく、今を重視しなければ、この状態は永遠に続きます。

目標は重要ではないと言うつもりはありません。そうではなく、「もう少しがんばって働いて、お金を儲け、恋人ができたら、すべてを手に入れることができて幸せになれる」という誤解が蔓延している、と私は言いたいのです。現代の消費社会は絶えず耳元でサブリミナル的にこの約束をささやきます。

人間の価値を富や所有物や地位によって測ろうとする社会の破壊的性質について語るのは、私が最初ではないし、 もちろん最後でもないでしょう。また、この文化を変えることはできないでしょう。けれども、それが私たちの考え方や自信にどう影響し、どのようにスモール・トラウマを引き起こしているかに気づくことはできるはずです。

デジタル上のスモール・トラウマ

今日では、私たちが生きる世界は現実の世界だけではなくなりました。完全なデジタルの世界が存在し、そこでもスモール・トラウマは発生します。この世界は新しく、アメリカ開拓時代の西部にも似て、何が許され何が許されないかというルールやコンセンサスが欠如しています。偽情報の急増、個人情報のセキュリティリスク、オンラインでのいじめ、荒らし、ストーカー行為、リベンジポルノ、キャンセルカルチャー等々、私たちはスモール・トラウマを経験するまったく新しい世界を作り出してしまったのです。

デジタル技術の進歩には数えきれないほどの恩恵がありますが、バーチャル世界で経験する危害については、ようやく理解され始めたところです。また、愚かな過ちも含め、行動のすべてがアップロードされ、オンライン上に永遠に保存されることは、生きることの本質を恐ろしいものに変えてしまいました。「自分が10代だった頃にソーシャルメディアがなくてよかった!」というセリフを何度耳にしたことでしょう。しかしこれが、若い人たちが生き方を学んでいる世界なのです。

メグ・アロール:臨床心理士・心理学者

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