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セブンの「リベンジドーナツ」、実は副産物だった? 7年ぶりの挑戦の裏には意外なドラマがあった

東洋経済オンライン / 2024年11月9日 7時40分

最終的にメーカーの協力のもとで設備投資に至ったが「最初は工場の端っこで生産を開始した。売れる保証がない中での投資で肩身は狭かった」(米田氏)という。

素材の配分も試行錯誤が続いた。工場の生産が軌道に乗り、取り扱い店舗数も増えていったが、店舗当たりの販売数量は1日数個と伸び悩んでいたからだ。出来たてを訴求するファストフードは、少なくとも1日10個程度の販売を維持できなければ品質を保てない。

粉の改良が当たり、ギネス級のヒット

「出来たてカレーパンのポテンシャルはこんなものではない」。7000店まで販売を広げていたが、セブンは改良のために販売を一時中止。材料や製造工程を見直すことになった。

とくにこだわったのが香りだ。通常、カレーは製造後にしばらく寝かせて具材のうまみを溶け出させるが、製造からすぐに生地へ詰め、冷凍する方式に変更した。中身のカレーを出来たての状態で維持することで、一口目からスパイスが香るようにした。

これが当たった。東京都、神奈川県、静岡県で再びテスト販売をしたところ、販売数は従来の3~4倍に伸長。委託先工場の拡大など製造体制も拡充し、2022年12月には全国販売を開始した。

2023年の年間販売数は7698万個を達成。今年、「最も販売されている揚げたてカレーパンブランド」としてギネス世界記録にも認定された。新たな消費者のニーズを捉えた商品といえるだろう。

こうしたカレーパンでの苦労と大ヒットが、かつて撤退したドーナツの再挑戦につながっていく。

カレーパンの快進撃によって「生地×ファストフード」のポテンシャルを再認識したセブン商品部のメンバーたち。この組み合わせを駆使し、新しいファストフードを開発できないか。そう考えた結果、再びたどり着いたのがドーナツだった。

2023年7月、「お店で揚げたマラサダ」としてテスト販売に乗り出したが、結果は思わしくなかった。客の評判はいまいち。ドーナツはカレーパンよりも生地の量が多く、オイルを吸いすぎてしまっていた。

そこで粉の配合を見直した。もちっとした食感に仕立てるために入れていた米粉の配分を増やした。米粉は小麦粉よりも油を吸いづらい特性がある。米粉の中でもより吸油しづらいものを選定し、それに合うように小麦粉の種類も変更していった。

数々の改良を経て現在の生地を完成させ、マラサダのテストから1年後の2024年7月、リング状のドーナツも含めて埼玉県から販売を広げていった。

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